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2022/10/24

NIリサーチャーコラム #26 世論調査って何?~「なんだかしっくりこない」は、実はとても大切~

執筆者: 営業推進部 シニアリサーチャー S.T

※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。

 

1)世論とは?

 

ここのところ、国の行事の賛否、日本の内閣支持率、某国の大統領支持率など、「世論調査の結果では」という報道に接することが多々あるのではないかと思います。

 

その都度TV局、新聞、ネット上など様々な場所で、同じようで違う、場合によっては賛否、支持・不支持が逆転している結果などもあり、「いったい何を信じたら良いのだろう」と感じたことはないでしょうか。

 

広辞苑で「世論」を引いてみると、「世間一般の論」と出てきます。

 

「世論調査」が「世間一般の論」を調べたものだとしたならば、果たして「世間一般」とはなんなのでしょう。

 

統計的に語られるべき「世間の一般の論」は、

 

・いつ(調査時期)
・誰が(調査主体)
・誰に対して(どのような方法で抽出した相手に対して)
・何人に(サンプル数)
・どのような方法で(面接/電話/インターネット等)
・どのように聞いたのか(2択なのか/3択なのか/もっと多いのか  考える時間を与えたか フラットに聞いたか 等々)

 

など、結果だけではなく、データを集める調査設計が非常に重要であるということはこれまでのコラムでも書いてきました。

 

世論調査に関して
#11 世論とSNS ~SNSとともに動く人と社会~

 

調査手法の変遷について
#10 スマホリサーチの可能性 ~スマホ調査はこれからのスタンダードになるのか~

 

サンプル構成と数値の読み方の注意点について
#02 分析視点からみたサンプル構成

 

このように何度も書くほど、データを扱う我々にとっては、結果は同じ35%であったとしても、それはどのような集団における35%なのかは非常に重要な問題です。

 

それは、データを読み解くための基礎の基礎であり、ある特異な集団に聞いた結果である35%を、あたかも日本人全員に聞いても35%だ!と取れるような分析をするのは恥ずかしいよというのは、私が若い時には先輩方に繰り返し言われてきたし、私自身も折に触れて後輩たちにも話してきたことです。

 
 

2)世論調査はどのように行われているのか

 

ある程度調査期間が取れるものであれば、層化二段無作為で抽出した対象者に対して面接や郵送で行うこともありますが、時事についての意識調査はスピードが重視されることもあり、電話による簡単な聞き取り調査によって行われているケースもあります。

 

同じ電話調査でも、自動音声で回答者がプッシュボタンやスマホの画面をタッチすることでデータを収集しているものもあります。

 

また、短期間で多くのサンプルが集められるという利点からインターネット調査結果を活用している場合もあります。

 

その中でも「世論調査結果」と言うためには、「とりあえず1,000人に聞きました」の結果を出すわけにはいかないので、

 

・インターネット調査:登録情報に基づき性年代を割りつけ、できるだけ幅広い人に聞く
・電話調査:RDD(Random digit dialing)方式で、コンピューターによって電話番号を自動生成し、架電する

 

といった方法が試みられています。

 

「電話調査なんて固定電話に無作為にかけているんだから、回答者は昼間自宅にいる高齢者ばかりでしょう」といった声もありますが、実はRDDはかなり前から携帯電話番号も含めた自動発生になっているものもあります。

 

ただし、

 

・携帯電話番号は固定電話のように「市外局番」+「市内番号」+個別番号でエリアが決まっていない
・IP電話の普及や転送方式などにより、固定電話でも番号=エリアではないケースも増えている

 

など、電話による「エリアを含めた無作為抽出」はかなり困難になってきています。

 

さらに、最近は、固定電話でも携帯電話でも「登録されていない番号には出ない」人も増え、また携帯電話の場合は屋外、職場、電車の中、駅など、世論調査に答えづらい場所にいる場合もかかってきますので、うっかり電話をとってしまったけれど適当に答えておこう!という人もいるかもしれません。

 
 

3)サイレント・マジョリティとノイジー・マイノリティ

 

もう一つの「世論調査の課題」といわれているのが、サイレント・マジョリティとノイジー・マイノリティです。

 

サイレント・マジョリティ:いわゆる「静かな大衆」もしくは「物言わぬ多数派」で、積極的な発言行為をしない一般大衆のこと
ノイジー・マイノリティ:「声高な少数派」 サイレント・マジョリティの対義語

 

私自身はかつて公共系のシンクタンクで「市民意識調査」を数えきれないほど分析していたのですが、30数年前、無作為抽出郵送調査でも、市民生活に直結するまちづくりに関する意識調査などは数万人規模以下の小規模自治体の回収率は60%を超えることも珍しくありませんでした。

 

ただ、現状では、それらの小規模自治体でも30%を下回ることもあり、数十万、数百万規模の自治体では10%以下ということも起こっています。

 

回収率が下がると何が起こるかを想像してみてください。

 

その調査テーマについて「特に興味がない」「特に賛成でも反対でもない」「特に示すほどの意見は持っていない」=サイレント・マジョリティの方々は積極的に答えることはない。

 

となると、「なにか言いたい人」=ノイジー・マイノリティが回答者に占める割合が、全体に調査したよりも高くなってしまう危険性もあるわけです。

 

また、世論調査の場合は、結果をわかりやすくするために「賛成・反対」「支持・不支持」の2択にすることも多く、「わからない」「どちらともいえない」といった答えを求めない場合もあります。

 

しかし、賛成・反対、支持・不支持はそれほど単純な話ではなく、「この点では賛成だけど、この点では反対」「自分に影響がないならどうでもよい(反対ではない)けれど、自分が不利益を被るなら反対」といった意識はある意味当たり前なのですが、そこまで複雑には聞いていない数値だけが独り歩きしていることも多々あります

 

記憶に新しいところでは、「国民を分断した」かのように言われ、マスコミでもその一面だけが強調されていた国の行事においても、おそらく多くの方々は、あの日、普通に仕事をし、日常生活を送っていたのではないでしょうか。

 

そして、「自分のまわりでは話題にもなっていない」と感じていた方々も多かったかもしれません。

 

マスコミだけではなく、SNSにおける「世論」のようなものも、様々な角度から検証してみると、ノイジー・マイノリティの声が実態よりも大きくなってしまう現象が起こっていることは、残念ながら否定できない現状があります。

 
 

4)世論調査は無駄なのか?

 

以上のように、「世論調査」を統計的に「世間一般の論」ととらえることはとてもハードルが高いのですが、とはいえ「世論調査は無駄なのか」といえば、決してそうではありません

 

どのような方法にしろ、1,000人、2,000人というサンプル数を無作為に選び、あるテーマについて意識を聞くということは、自分のまわりの人たち、自分と考えが近いSNSのコミュニティの中、「炎上」しているSNSの書き込みだけを聞き、見ているよりは「世間一般」に近い感覚としてとらえることはできます。

 

特に内閣支持率のような時系列で同じ条件で調査している場合、先月よりもアップした、ダウンしたという結果は、数値自体は参考程度であったとしても、全体から見ると支持率は変化したということは想像できます。

 

それは数か月後に社会全体の動きとして出てくることになるのかもしれません。

 
 

5)世論調査に参加しよう!

 

では自分自身が「世間一般の人」として何ができるか?と言うと、まずは何らかの無作為抽出で調査依頼が来た場合は、面倒かもしれないけれど、参加しましょう。

 

また「世論調査」の結果を目にした場合は、まずは自分だったらどう答えるかを考えてみましょう。

 

そして、自分なりにその結果に納得できるかどうかを考えてみましょう。

 

ここで納得できるか、なんだかしっくりこないかは実はとても重要で、「自分は反対しているけれど、周りの人はそうでもないようだ」と思う事柄で反対が少なければそれはしっくりくるでしょうし、逆に「自分は賛成しているけれど、周りの人はそうでもないようだ」と思う事柄で賛成が圧倒的に多ければ、それはなんだか変かもしれない。

 

そして冒頭に書いたような

 

・いつ(調査時期)
・誰が(調査主体)
・誰に対して(どのような方法で抽出した相手に対して)
・何人に(サンプル数)
・どのような方法で(面接/電話/インターネット等)
・どのように聞いたのか(2択なのか/3択なのか/もっと多いのか  考える時間を与えたか フラットに聞いたか 等々)

 

が明確に示されているかどうかも確認しましょう。

 

また、同じ機関が過去にも同様の調査をしているのであれば、「不自然に数値が動いていないか」を見ることもお勧めします。

 

上がった・下がった理由に思い当たるところがあるのであれば、その調査は信頼度が高いと考えられます。

 

さらには、その数週間後、数か月後、世の中がどう動いいているのかも、意識してみると良いかもしれません。

 

ノイジー・マイノリティによって引っ張られる世の中は、どこかでサイレント・マジョリティを置き去りにしてしまうかもしれない

 

日本は世界的に見てもサイレント・マジョリティが多い国民だと言われているのですが、それが良い場合もあるし、それでは気づかぬうちに社会がとんでもない方向に動いていってしまうこともある。

 

そんな意識を持ちながら、様々な調査結果に興味を持つことが、まずは一番大切なのではないかと思っています。

 
 

6)調査はとても奥が深い

 

「賛成は35%」という結果は、自分のまわり100人に聞いて35人でも35%だし、できる限り無作為に抽出した1,000人に、できる限り正確な回答が得られる手法で聞いて350人でも35%です。

 

しかし、その35%の持つ意味はまったく異なります。

 

前者の35%を「一般市民の意見」だと勘違いして施策を打てば、失敗してしまう確率は後者よりも格段に高いといえるのではないでしょうか。

 

実は調査はとても奥が深いのです。

 

市場調査は、世論調査とはまた異なる視点が必要です。

 

「世の中の自身のブランドの認知度や好感度、購入意向」を知るために、定期的に莫大な予算を使って、層化二段無作為抽出の対象者に対して訪問面接・留め置き調査(100%回収を目指す)を行っていた企業様も過去にはありました。

 

現状ではこのような調査の実施は難しくなっていることもあり、数としては激減しています。

 

電話調査については、もともと日本では海外ほど一般的な手法ではなかったこともあり、また前述したような課題もあって、ボリュームのある定量調査には不向きです。

 

その点、PCやスマートフォンで回答するインターネット調査は、ある程度ボリュームがある調査であっても、スピーディーにデータを集めることができますし、「その商品のユーザー」「購入経験者」「高興味層」であったり、ターゲットにしている「30代で保育園児の子どもを持つフルタイム勤務のママ」といった条件に合った人だけに聞くといった調査は、他の手法と比較して非常にリーズナブルに実施することができます。

 

ただし、その結果をより正確に得るためには、実施媒体や調査設計側のノウハウが重要になってきます。

 

・対象者が自分の考えを正確に回答したいと思える調査票の設計
・パネルの中のある一部の人だけではなく、より多くの人に回答の機会を持ってもらえる抽出の方法
・得られたデータの整合性の検証

 

など、我々も多角的な取り組みを日々積み重ねています。

 

さらに、調査の目的によって、データの収集方法も検討する必要があります

 

当社は、世論調査、市場調査、ユーザー調査等々、様々な目的での調査設計・分析を、当社独自を含めた様々な手法で数多く実施しております。

 

「こんなことを知りたい」と思ったら、ぜひ信頼できる調査会社にご依頼ください。

 

我々にご依頼いただければ、経験豊富なリサーチャーが、目的・ご予算に応じ、「役に立つデータ」をできる限り正確に得られる設計・分析をお手伝いさせていただきます。


執筆者プロフィール

営業推進部 シニアリサーチャー  S.T

 

工学部工学研究科博士課程都市・交通計画専攻で道路計画、交通計画、都市計画を学ぶ

公共系シンクタンク、大学研究所では総合計画・各種計画・施策の立案、

住民参加型まちづくり事業の推進を担当

 

高速道路建設の経済効果等を研究する中で、「満足度をお金に換算して経済効果に計上できないのか?」と

思い立ち、マーケティング理論に出会う

39歳でマーケティングリサーチ会社に転職

その後は各種公共施策の立案と並行し、商品開発、市場分析等を担当

海外調査(グローバルリサーチ)については、気づいたら16か国延べ40都市で50以上のリサーチを実施

7年前から現職

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