2019/07/26
執筆者:NIマーケティング研究所(集計分析・海外案件担当) S.T
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
インターネットリサーチの普及により、本調査対象者の条件を限定するいわゆる「スクリーニング(SC)」が可能になったことで、実は分析視点では「隔靴掻痒 ※1」ともいえるデータが増えてきているように感じます。
※1 隔靴掻痒(かっかそうよう):物事の核心や急所に触れず、もどかしいこと
パネル数が膨大になり、様々な条件でターゲットを絞った定量調査が「スピーディーに/広域的に/経済的に」実施できるようになったことは、マーケティングリサーチの可能性を大きく広げるものでした。
しかし、そのような条件で集めたデータの取り扱いに困ってしまうということもあるのではないでしょうか。サンプルを限定したリサーチは、
「ターゲット層の意見をたくさんとれた!」
と一見思われがちなのですが、その危険性もまた認識しておくことは重要です。
「この商品は30代の子どもが保育園に通っているフルタイムワーキングママに売れるはずだ - 」
例えば上記のような仮説をもち、それを検証するために、この条件を満たすサンプルだけに購入意向を聞いたとします。そして結果は購入意向TOP2で70%でした。これは高いのでしょうか低いのでしょうか。
答えは「高いのか低いのかは判断ができない」です。
リサーチの目的が「この条件の人の購入意向TOP2が65%以上なら、この商品の開発目的は達成している!」ならば、これで良いのです。結果は70%ですから合格です。しかし、「高いのか、低いのか」は、比較対象がなければ明らかにはなりません。
この時、比較対象として「専業主婦」や「DINKS(子どものいない共働き)」を含んで設計していれば、
「専業主婦よりも高いのか低いのか」
「DINKS(子どものいない共働き)よりも高いのか低いのか」
という検証ができますが、サンプルそのものに比較対象者が含まれていなければ分析はできません。
つまり検証する目的によって、調査対象のサンプルは慎重に検討する必要があるのです。
「マーケティングリサーチをしよう!」となると、まず調査(アンケート)票の設計に頭がいってしまいます。
「これを聞きたい」「こんな風に聞きたい」「これを明らかにしたい」。
しかし、検証目的やサンプル構成を念頭におかずに設計された調査票から得られた結果は、
「なんだか思っていたのと違う」「仮説検証がなされたような、なされていないような・・・」
という中途半端なものになってしまうことも多々あります。
その目的であれば、誰に対して(サンプル構成)、どのような方法で(インターネットリサーチなのか、会場調査(CLT)なのか、グループインタビュー(FGI)なのか)、どの程度の規模で(サンプルサイズ)何を聞けばよいのか。日本インフォメーションには、それを提案できるリサーチャーがいます。迷った時、困った時には、ぜひご相談ください。
NIマーケティング研究所(集計分析・海外案件担当) S.T
工学部工学研究科博士課程都市・交通計画専攻で道路計画、交通計画、都市計画を学ぶ
公共系シンクタンク、大学研究所では総合計画・各種計画・施策の立案、
住民参加型まちづくり事業の推進を担当
高速道路建設の経済効果等を研究する中で、「満足度をお金に換算して経済効果に計上できないのか?」と
思い立ち、マーケティング理論に出会う
39歳でマーケティングリサーチ会社に転職
その後は各種公共施策の立案と並行し、商品開発、市場分析等を担当
海外調査(グローバルリサーチ)については、気づいたら16か国延べ40都市で50以上のリサーチを実施
4年前から現職
マーケティングを「一生の仕事」に