2020/09/02
執筆者: リサーチコンサルティング部 第2チーム リサーチャー S.T
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
私が仕事で日常的にインターネット調査を利用するようになったのは、2000年以降です。
ただその頃のインターネットは、テレホーダイ(NTT各社が提供していた23時~翌朝8時まで定額で電話回線が使えるサービス)を利用して、マニアが接続する場所(偏見かもしれませんが・・・)だったし、自宅にPCを持つにはそれなりの経済力も必要でした。
さらに自宅にPCを持つ必要性がある人は限られていたので、リサーチパネルの構成にはかなり偏りがありました。
大学等では既に情報教育も進められていたので、若年層の割合は高かったのですが、30代以上ではそれなりの高所得者や高学歴層が多く、40代以上の女性はほとんどいない、60代ともなれば男女ともいない、いてもかなり特殊な方々。
だから「一般的な調査」としてその結果を読み解くには、パネルの特性を考慮することが必要でした。
そんな時代がしばらく続き、しかし得られたデータを見続けていると、なんとなく「一般的な人々」に近づいてきたのではないか?と思い始めたのが2006年ごろ。日本におけるインターネット人口普及率が70%を超えた頃です。
とはいえ、まだ高年代層は集めにくい時代でした。
2010年ごろになると、パネルの年代もかなり上がってきて、これは一般調査の代わりになるかも??と期待し始め、2015年ごろには「これは新しい時代が来るかも??」などと思っていたのですが・・・
この頃から、妙な変化が見え始めます。
20代後半から50代ぐらいは比較的簡単に集まるのですが、20代前半がだんだん集まらなくなってきたのです。
一体何が起こったのでしょうか。
そうです。若者たちの情報通信機器が、PCからスマホへ、じわじわと変化し始め、PCを開く頻度がどんどん減ってきていたのです。
だから、PCで回答する必要のあるweb調査の若者の回答率は、あれよあれよという間に下がっていきました。
ところで、スマートフォンはいったいいつ日本にやってきたのか、覚えていますか?
日本で最初にiPhoneが発売されたのは2008年7月です。ほんの12年前。
私自身は、当初「タップ」がうまくできず、こりゃダメだといわゆるガラケーを使っていたのですが、結局世の中の流れには逆らえず、2011年に発売された4sから使うようになりました。とはいえ考えてみればまだ9年前のことです。
でもその頃も、海外に行くと街中でポチポチしている人もいましたが、日本ではまだまだ「高価な電話」で、アプリも限定的、通信速度も遅い、通信費も高い、無線LANなんぞどこにもないという状況だったので、電車の中でポチポチしている人もそんなにみかけることはありませんでした。
本当にこれが一般的になるのか?と正直思っていたし、たとえスマホを持っていても、ネットで情報を集めたり、長文やファイル添付しなければならないようなメールの送受信をするためには自宅にPCは必須でした。
今や日本人の約66%が利用しているといわれているLINEも、一般的に利用されるようになったのは2013年ごろからではないでしょうか。つまりほんの7年前です。
さて、皆さん少し記憶を戻していただくと、ご自宅で毎日PCを開いていたのはいつ頃まででしょうか。
「今でも日常だよ!」という方もいらっしゃるかとは思いますが、考えてみると、私が最後に私用のノートPCを買ったのは2013年のWindows8。その後、スマホを買い替えるたびにPCを開く必要がなくなり、このノートPCがWindows10にアップデートしたら動きが悪くてどうしようもなくなった頃には、もう自宅でノートPCを使う必要はほとんどなくなっていました。2016年ごろだったと思います。
私自身はとうに若者ではありませんが、若者のweb調査回答率があれよあれよという間に下がっていった頃と合致します。
住民基本台帳の閲覧の制限も厳しくなり、世帯データも集められないから、郵送調査のための住所の収集ができない。
電話帳に氏名を載せない人もどんどん増える。
オートロックマンションも増え、インターフォンにすら応答してもらえない。
訪問調査に行けば、不審者扱いされて警察に通報される。
調査会社受難の時代に、救世主のように現れたweb調査。
やっと一般的な調査として市民権を得はじめたのに、今度は高齢者だけではなく、若者のスマホ移行で回答率も下がってくる。
私たちはどうやって調査対象者をみつければよいのだ?と悩み続けてはや何年。
もちろんweb調査自体も、スマホからも回答できるように、回答画面のスマートフォン対応は進めていたものの、PC画面で回答しやすいように作られたweb調査画面や、すでに一般化しているweb調査のフォーマット自体を、スマホでも回答しやすく変更することはなかなか難しく、回答精度にも課題が出てきていました。
そんなところで現れたのがスマホ調査です。
そこで、私たち日本インフォメーションは、多様化する調査需要に対応するために、2017年からLINE利用者をパネルとしたLINEリサーチを活用することにしました。(LINEリサーチ提供開始のお知らせ)
さらに2020年1月には、LINE社様が制度化した「オフィシャルパートナー」になり、より幅広い調査需要に対応できる体制を整えました。(LINEリサーチのオフィシャルパートナー認定のお知らせ)
このパートナーシップにより、中高生を含めた若者、日常的にPCに触れることが少ない層など、さまざまなターゲットを対象とした調査が可能になりました。
実際にスマホ調査を開始してから、試行錯誤を繰り返していく中で、私たち自身もweb調査と同じものをスマホ調査にスライドすればよいわけではないと改めて認識することが多々ありました。
スマホは画面の大型化が進んだとは言っても、やはりPCの画面とは違います。
だから10選択肢×30項目のような大型のマトリックス調査には不向きです。
また、長い文章を読んだり、大きな画像を見て回答していただくことにも不向きです。
実際、LINEリサーチにはマトリックス設問に対応する仕組みがありませんし、設問文や選択肢の文字数にも制限があります。
ただ、スマホにはカメラがついているので、例えばどこかで気になったモノの写真を撮影してもらってすぐにアップしてもらう、自宅の調理の様子を動画で撮ってアップしてもらうなど、機動性はPCよりも格段に高いです。
「それならタブレットでも・・」と思われるかもしれませんが、スマホはいつも手の中にあるもの。
電車移動の途中に気軽に答えていただいたり、プッシュ通知で「今の気持ちを答えて」「今日あった出来事を答えて」など、スマホならではの調査も可能になります。
さらに、日常的なコミュニケーションツールであるLINEで、対話スタイルで回答していただく調査だからこそ、率直なお気持ちや自然な回答を得られることもわかってきました。
私たちは、様々な調査手法を日常的に活用しているからこそ、
・その内容ならばweb調査
・その対象者ならばスマホ調査(LINEリサーチ)
・その目的ならばweb調査
・その結果を得たいのならばスマホ調査(LINEリサーチ)
など、同じネット調査であっても、お客様の調査目的を的確に把握し、ふさわしい対象者に的確にリーチし、対象者にとっても答えやすく、お客様にとってより有意義な、役立つデータを提供する調査をご提案いたします。
「こんな対象者を集めることは難しいだろうな」「こんな調査をしてみたいけれど、どんな手法で行えばよいのかわからない」
そんな課題をお持ちの際には、ぜひ弊社の経験豊富な営業担当にご相談ください。
リサーチコンサルティング部 第2チーム リサーチャー S.T
工学部工学研究科博士課程都市・交通計画専攻で道路計画、交通計画、都市計画を学ぶ
公共系シンクタンク、大学研究所では総合計画・各種計画・施策の立案、
住民参加型まちづくり事業の推進を担当
高速道路建設の経済効果等を研究する中で、「満足度をお金に換算して経済効果に計上できないのか?」と
思い立ち、マーケティング理論に出会う
39歳でマーケティングリサーチ会社に転職
その後は各種公共施策の立案と並行し、商品開発、市場分析等を担当
海外調査(グローバルリサーチ)については、気づいたら16か国延べ40都市で50以上のリサーチを実施
4年前から現職
マーケティングを「一生の仕事」に