2022/06/08
執筆者: 営業推進部 シニアリサーチャー S.T
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
5月のGW明け、弊社の自主調査担当窓口に、報道機関から立て続けに「自主調査結果を使用したい」との連絡が入り、いくつかの報道番組や全国紙・地方紙等で取り上げていただく機会を得ました。
内容は、「~マスク生活が長期化した今を読み解く~ マスク着用の意識・行動調査」です。
~マスク生活が長期化した今を読み解く~ マスク着用の意識・行動調査 | アンケート調査・マーケティングリサーチなら日本インフォメーション
調査自体は2022年2月に行ったものなのですが、新型コロナをめぐるマスク着用の新ルールづくりが検討される中、「一般市民の意識」として取り上げていただいた番組が多かったように思います。
全国放送の報道番組に「日本インフォメーション調べ」のクレジットが流れることは、社員としてはやはりとても嬉しく誇らしいものです。
使用される場合は報道各社から事前にご連絡をいただくので、出社している社員は社内で、リモート勤務の社員は自宅で、「会社の名前が出た!」と都度盛り上がっております。
新聞掲載の場合も、内容を共有しております。
「マスク警察」「顔パンツ」などという新語を作り出したコロナ禍のマスクでしたが、慣れてしまうと「化粧をしなくてもよい」「若く、かわいく見える」「ひげをそらなくてよい」など着用のメリットを発見した人もいれば、「とにかく早くはずしたい!」「子どもは『はずしていいよ』と大人から言われなければはずせない」など、「マスクはしなくていいよ」と誰かに言って欲しい!という意識も垣間見られました。
諸外国とは異なり、日本国内では「マスクの着用」は「お願い」であり、行動規制や罰金の対象ではありません。
つまり、嫌なら今すぐ外してもマスク未着用だから法的に行動を制限されることも罰金を取られることもないのに、「誰かマスクはしなくて良いと言って」=「マスクをしていない自分は悪い人でも変わった人でもないと認定して」ということなのか?と、これらの結果は非常に興味深いものでした。
様々なメリットを挙げる人たちも、実は「どうせしなければならないものなら、何らかのメリットを発見したい」と思ったのかもしれない。
マスクをするのは嫌だ!という気持ちが強い人は、「本当に感染防止になるのか?」と疑問を持ち、それが「効果があることを科学的に示せ」という気持ちにつながったのかもしれない。
そしてそれが明らかになればあきらめもつくし、明らかにならないのであれば、「マスクをしない自分を非難しないでくれ」という気持ちを持ったのかもしれない。
実のところ、インフルエンザでも普通の風邪でも、これまでも「咳が出るから、周りの人にうつすと悪いからマスクをしよう」という人もいたし、自身の体調は悪くなくても「電車や会社の中でたまたま近くに座った方からうつるのが嫌だからマスクをしていた」という人もいたでしょう。
新型コロナの厄介なところは、「無症状の人からも感染するらしい」という当初の見解から、「自身のためだけではなく、周りの人のためにも体調に関わらずマスクをすべき」となり、「マスクをしない人は周りの人のことを考えていない人」というレッテルを貼られることに恐怖や不合理を感じて、マスクの着用・非着用が「個人の自由」ではなくなってしまったからこその意識なのかもしれません。
これらが「同調圧力」という言葉を生み出した面もあるのかもしれませんが、アンケート結果を見る限り、性年代で差はあるものの、「相手がマスクをしていること」について、全体では「どちらでもよい・気にしない」が4割以上で、「どちらかといえば着用している方が良い」「着用している方が良い」は合わせて35%程度。「着用している方が良い」は19%です。
自身のコロナ収束後のマスク着用意向では、「いつも必ず使用」「できるだけ使用」が55%だったことを合わせて考えると、世間で流布されているほど「自分もするんだから、あなたもしろ」という、いわゆる「同調圧力」と言われるものは本当はそんなに強くはないのでは?と思うか思わないかは数字のとらえ方の問題ではありますが、少なくとも街中で10人すれ違って、相手のマスクの非着用を強く気にしている人は2人程度。
これが2月の調査結果ですから、感覚としては現状はもっと下がっているのではないかと私は思います。
こんな風に、このアンケートだけでも、答えた人の様々な意識が想像できるし、「○○は〇%でした」という結果から読み取れる要因は無限にある。
なんとなく言われている「世の中の当たり前」が本当なのか違うのか、様々な視点でみる面白さが意識調査にはあります。
しかし、これほど「不織布マスク」について一年中考えるのは、四季折々に花粉症になる人ぐらいではないか?と思いつつ、すっかり「しなくてはならないもの」「するなら快適なもの」と、ほんの2年前は手に入れば感謝していたものから機能性、デザイン性まで求められるようになり、不織布マスク業界はさぞや技術的にも進歩したことだろうなどと考えてしまうのはもはや職業病です。
このアンケートに限らず、実は弊社はかねてから「自主調査」に力を入れています。
自主調査一覧 | アンケート調査・マーケティングリサーチなら日本インフォメーション
最新は4月リリースの「~値上げの春 消費者はどう対応?~ 2022年の値上げに関する意識・行動調査」。
こちらも、様々なメディアで取り上げていただきました。
そのほか、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた時、バレンタイン、コロナ禍における意識・行動調査、SDG’sに関する調査・・
テーマは、担当者グループで話し合ったり、「こんな調査をしてみたい」と社員の誰かが提案したり、様々なかたちで決めています。
日々の暮らしや折々のイベントなどで、社員自身が知りたいと思うことを取り上げることもありますし、クライアント様とのお打合せの中で「こんなことに興味があるんだよね」とおっしゃっていただいたことを取り上げることもあります。
また、市場調査会社としては、若い世代に「調査」の面白さを知って欲しいという人材育成や、また実務に生かすためのトレーニングの意味もあります。
現在は、「アンケート調査をする」だけであれば、調査票を作ってwebで配信し、簡単にデータは集まってしまいます。しかし、実は「調査票の設計」というのはリサーチャーの力量が最も試されるステップなのです。
設問の聞き方、順番、選択肢の並べ方、選択肢のチョイスで、調査結果は全く違ったものになってしまいます。
満足度を聞くにしても、「とても満足」「やや満足」「不満」 の3択と、「とても満足」「やや満足」「どちらもいえない」「やや不満」「とても不満」の5択では、満足度と不満度の割合は、たとえ後でTOP2など足し合わせたとしても全く違ってきます。
また、選択肢についても、その中に自分の意識に当てはまるものがない場合、わざわざ「その他」にチェックして詳細を書く方は実は少なく、回答者の多くは「選択肢の中から選ぼう」とします。
もし「その他」の割合が非常に高くなった場合は、リサーチャーとしてはその選択肢の立て方は失敗だったということになります。
「その他」を後でアフターコーディングしたとしても、それは選択肢の中にあった場合の結果とはやはり異なるでしょう。
また、同じ1,000sを対象にするとしても、調査対象によっても、調査手法によっても結果は違ってくることもあります。
さらに調査結果の数値の読み取り方も、数をこなしていくことでより多くのものが見えてくるというのも、実際にもうどれだけの調査をやったかもわからないアラカンリサーチャーはなおのことよくわかっています。
だから、自社の責任でやる自主調査で、より多くの経験を積み、実務に生かしていって欲しいという思いで自主調査を行っています。
さらには若いリサーチャーたちに「調査の楽しさ」を知って欲しいという気持ちから、「この結果、ここが面白いね」「こんなふうにも読めるよね」と、おせっかいおばさんは横から感想を述べたりもしています。
報道番組では、取り上げる内容の話題のひとつとして、また「世の中の人はこう思っている」という確認や問題提起として、我々の自主調査結果を活用していただくことが多いです。
クライアント様から依頼される調査では、
・コンセプトAとB どちらがターゲットに受けるか?
・新商品を上市する場合、市場規模はどの程度か?
・リニューアルにあたってパッケージAかパッケージBか迷っているが、どちらが受け入れられるか?
・この商品を必要としている人はどのような人か?
・この味とこの味、ターゲットはどちらが好みか?
など、様々な目的で、様々な手法で行われます。
我々も、クライアント様が求めるデータを、正確に、的確に集められるご提案ができるように、日々研さんを積んでいます。
手法についても、定量調査、定性調査、ノンバーバルリサーチ、グローバルリサーチまで、様々な要望に応えられるよう、各種ツール、設備・施設を充実、開発しています。
また、「まだそんなに大がかりな調査をする段階ではないのだけれど、事前調査として低価格でアンケートをしてみたい」という方向けのDIYリサーチのご紹介、「ターゲットと思われる数人の対象者に、とりあえず話を聞いてみたい」という方が手軽に行える定性調査ツールの開発なども行っています。
「こんな調査をしてみたい」「こんなことを知りたい」と思い立ったら、様々なテーマの自主調査で腕を磨いている弊社リサーチャーに、まずはご相談ください!
目的、ご予算に応じたご提案ができるよう、準備を整えてお待ちしております。
また、自主調査についても、公表されているものは調査結果概要ですので、「もっと細かい年代区分でみたい」「職業別でみてみたい」「問と問を掛け合わせたクロス結果がみたい」などのご要望についても対応可能です。
興味を持たれたものがございましたらお気軽に営業担当までお問合せください。(一部有料サービスになる場合もございます)
営業推進部 シニアリサーチャー S.T
工学部工学研究科博士課程都市・交通計画専攻で道路計画、交通計画、都市計画を学ぶ
公共系シンクタンク、大学研究所では総合計画・各種計画・施策の立案、
住民参加型まちづくり事業の推進を担当
高速道路建設の経済効果等を研究する中で、「満足度をお金に換算して経済効果に計上できないのか?」と
思い立ち、マーケティング理論に出会う
39歳でマーケティングリサーチ会社に転職
その後は各種公共施策の立案と並行し、商品開発、市場分析等を担当
海外調査(グローバルリサーチ)については、気づいたら16か国延べ40都市で50以上のリサーチを実施
7年前から現職
マーケティングを「一生の仕事」に