2022/08/23
執筆者: リサーチ・ディレクション部(営業企画担当) H.K
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
長いコロナ禍が続き、この猛暑の中でも律儀な日本人はきちんとマスクをしており、マスクは顔の一部になっている感覚の人も多いかと思います。
そんなマスク生活の中でも「目」を覆うことはほぼなく、「目」は常に見ています。マスクで少々鈍感になった鼻よりも、多くのものを得ているのかもしれない。
また、顔全体の表情から読み取れていた相手の感情も読み取りにくくなったと感じることもあるかもしれません。
さらに、商品選択の場面で言えば、「手で触れて確かめること」がためらわれるシーンも増え、味覚に訴える試食販売も困難になってきました。
人間は五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)からそれぞれ情報を得ています。中でも視覚器官(目)からは約90%と非常に多くの情報を得ていると言われていますが、コロナ禍のマスク生活を経て、商品選択における「視覚」の重要性はさらに高まっているとも考えられます。
前段が長くなりましたが、今回はその「目」にフォーカスしたリサーチ手法、アイトラッキングについてご紹介したいと思います。
このコラムをお読みの方には「そもそもアイトラッキングって何?」という方もいらっしゃるかと思いますので、ご存知の方には釈迦に説法ではありますが、まずは簡単にご説明いたします。
アイトラッキングとは、ヒトの眼球運動を分析し、視覚的注意などを明らかにする生体計測手法です。
ヒトの視線の場所(注視点)や動きを、専門機械で計測。取得したデータを分析し、よく見られていた場所、見る順序などを明らかにします。
弊社では約15年前からアイトラッキングを導入し、主に「商品陳列棚のレイアウト/棚割りの最適化」「店内広告/販促物(POP、パンフレット等)の効果測定」といった目的を果たすためにご依頼をいただいております。
近年コロナ禍ということも後押しし、弊社では「リアル手法とデジタル手法の融合」をテーマとした様々なソリューション開発に取り組んでおります。
その中の1つとして2022年4月より日本電気株式会社(以下NEC)の提供する遠隔視線推定技術を活用した「棚前視線分析ソリューション」にて新しいアイトラッキングの提供を開始しました。
このソリューションは装着デバイスを必要とせず、通常のカメラ映像から視線方向の推定を実現した技術であることが従来のグラスタイプのアイトラッキングとの大きな違いです。
これにより、より自然な行動でのアイトラッキングを実施することが可能となりました。
NECは、世界トップクラスの「顔認証システム」を開発・展開されている企業で、「棚前視線分析ソリューション」はその技術を応用した最先端のアイトラッキングとなります。
遠隔視線推定技術を活用した 「棚前視線分析ソリューション」提供開始のお知らせ
さらに、弊社ではこのソリューションを日本最大級の規模を誇るコンビニとドラッグストアの実店舗を再現した模擬店舗リサーチ会場(NI Shopper Lab.)で実施できるため、昨今非常に多くのお問い合わせをいただいております。
NI Shopper Lab.(模擬店舗会場)について 紹介ページはこちら
このように紹介すると「アイトラッキングってすごい技術!何でも解決できる!」と思われてしまいそうですが、残念ながらメリットもデメリットもあります。
例えば「パッケージの文字が小さくて見にくいからじっくり見た」「パッケージの配色が奇妙だから不思議に感じて注視した」なども、アウトプットでは「よく見た」という結果が出るので注意が必要です。
また、視線を正確に測定するためには、あらかじめ決められた場所で視線の「座標」を計測し、その後棚をみていただいて視線の動きを可視化します。
そのため、「棚前視線分析ソリューション」のデモにご参加いただいた企業様からは、「実際の商品選択の時にはもっと近くで見るのでは?」「手に取って成分を確認してから決めるのでは?」など、「自然な購買行動のデータは得られないのではないか?」といったご指摘もいただきました。
確かにもっともなご指摘でもあるのですが、手に取ったり、近くに寄って見る前段階の行動として、まず消費者は棚を俯瞰して「興味を持った商品」や「いつも買う商品」を探します。さらには先ほども記載した通り、コロナ禍を経て
・「実際に手に取る」「手に取ったものを棚に戻す」ことをためらう
・じっくり見て選ぶよりも、直感的に選んで、店内滞在時間を減らす傾向が高まる
など、「少々離れた場所から棚を見て、買いたい商品のいくつかを選ぶ」という行動は、実は加速していることもあるのではないでしょうか。
そのため、ミスジャッジをしないためにもインタービューやアンケートといったアスキング手法もセットで実施し、「よく見た理由」「よく見ていたのに実際には買おうと思わなかった理由」を明らかにするなど、「視線の動きの意味」を読み解く調査設計をご提案しています。
当社はパッケージ調査等においても、会場調査(CLT)で実物を見せたり、インターネット調査で棚を再現してイメージや購入意向を聞くといった通常の定量調査のほか、試食調査などのアスキング手法も実施しております。
さらに今回ご紹介したアイトラッキングのようなノンバーバルリサーチの導入を同時に進めているのは、ノンバーバルリサーチには調査票で聞くこととはまた違った角度からデータが得られるということを、これまでの経験から知っているからです。
ノンバーバルリサーチと従来のアスキング手法をセットで実施することにより、より精度が高いリサーチを実施することができます。
精度が高いリサーチを実施することができれば、上市後の販売データとの乖離を最小限に抑えることができ、短期決戦で勝ちにいきたいシーズン商品でも結果が残せるのではないでしょうか。
弊社では先に記載した通り、約15年前にアイトラッキングを導入し、日本ではじめてインタービュールームを開設した調査会社であることからも定性調査のオーソリティと自負しており、また会場調査(CLT)も業界屈指の実施数を誇っております。
その経験から、定性・定量とも経験豊富なリサーチャーが多数おります。
目的、ご予算に応じたご提案ができるよう準備を整えてお待ちしておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
リサーチ・ディレクション部(営業企画担当) H.K
大学卒業後、金融系シンクタンクへ入社。その後マーケティングリサーチ業界へ転じ数社を渡り歩く。
周りからはジョブホッパーと揶揄されつつも、途中から開き直り「どうせなら色々な会社を見たい、むしろそれが自分の武器になる」
と勝手に前向き?な気持ちで社会人生活を送り現在に至る。
当社は気づいたらあれよあれよという間に今年で9年目に突入。
改めて働きやすい環境と良い仲間に恵まれていることを実感している。
マーケティングを「一生の仕事」に