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2021/06/17

NIリサーチャーコラム #14 SDGsって何? ~2030年までに目指す新しい世界~

執筆者: リサーチコンサルティング部 第2チーム シニアエキスパート S.T

※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。

 

1)今さら聞けない、SDGsって何?

 

SDGsは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標です。

 

弊社でも、会社を上げてSDGsの理解と導入を行い、社会に必要とされ続ける会社運営を行っております。
日本インフォメーション SDGsの取り組みはこちら

 

そして、これらの各目標について、計169のターゲットが設定されています。
詳細はインターネットで検索すると見られますので、ここでは割愛します。

 

2)持続可能な開発とは

「持続可能な開発」という言葉を私自身が意識し始めたのは、1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際会議」いわゆる「地球サミット」でした。

 

その後、2002年に南アフリカのヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」に続く、「このままだと地球は大変なことになる」を考え始めたきっかけでした。

 

縁あってブラジルの会議に関わらせていただく機会があり、その時一番印象に残ったのは、途上国の人々からの「環境問題の対策というけれど、それは非常にコストがかかる。先進国はそのコストをかけずに発展してきたのに、途上国が発展するためには、そのコストを負担しろというのはフェアではない」という意見でした。

 

日本はバブル景気の終焉期ではあったものの、まだまだ「消費は美徳」といった空気は残っていました。

 

ただ、私は、親は戦前生まれ、子ども時代には「貧しい日本」のかけらをあちこちで実際に感じた世代で、うかれる日本を冷めた目で見ているところがありました。

 

経済成長を急いだあまりに、水質の悪化、大気汚染、処分が追い付かないあふれるゴミ、公害病といわれる種々の病に悩む人々、一極集中、経済格差など様々な矛盾を感じながら暮らしていました。

 

土木建設工学の中でも、都市計画やまちづくりを学ぼうと考えた理由も、その矛盾を解決する小さな力になりたいと思ったことが発端です。

 

だから、「我々は様々な失敗をし、取り返しのつかないことになってしまっているから、これから発展していく国々には同じ道を歩んでほしくないのだ」という思いもあったのですが、目先の発展を優先すると、「フェアではない」という考えもまたあるのだということは理解はしました。いまだにその答えは出ていません。

 

1992年の「地球サミット」や2002年の南アの会議では、フォーカスが当てられていたのは環境問題でした。その間、1995年の北京女性会議に参加、2002年以降はマーケティングという新たな分野で、欧米だけではなく、中南米、東南アジアの各国の市場調査を担当することになり、私の視野もさらに広がりました。

 

経済発展が進んでいく中で、過酷な環境で長時間、低賃金で働かざるを得ない人々、教育を受ける機会を奪われ、働かざるを得ない子どもたち。
あっという間に入り込んだプラスチックゴミであふれる海岸線。
排気ガスで息苦しいほどの街。

 

この20年は、「持続可能な開発」とは、環境問題だけではなく、世界中の人々が「豊かな生活」「幸せに暮らす」とは何なのかを真剣に考えなければならないと気づいた年月だったのではないでしょうか。

 

そして、それは、自分の周り、自分の国だけではなく、世界すべての国々、また「今」だけではなく、子どもたち、その子どもたちの世代まで思いを馳せ、まさに「持続可能な開発」を遂げていかなければより良い未来はない、という考え方だったのだと思います。

 

その「大きな目標」を達成するために、一人ひとりは何をすべきなのか。
それを具体的に、誰にでもわかりやすく示したものがSDGsなのだと思います。

 

先日、弊社の自主調査でも「SDGsって何?エシカルな消費活動の実態調査」を、また続いて「~サステナブルな成分原料とは~パッケージ表示に関する消費者の意識調査」をリリースしました。

 

とはいえ、「エシカル消費」も「成分表示の確認」もSDGsの中ではごく一部。
でも、その「ごく一部」の活動が多岐に組み合わさることで、より良い社会を作っていこうとしているのです。

 

3)本当にできるの?

 

ここのところ、世界各国の国が、企業が、SDGsの考えに基づき、様々な動きを見せています。

 

原料を含めた製造過程が過酷な労働環境や民族差別、子どもの労働につながると考えられる製品は輸入しない。再生エネルギー100%の企業にしか発注しない。

 

これは、一見関係なさそうにも見えるものはあっても、国や企業側からの取り組みの一つです。

 

そんな大きな話、自分には関係ないと思うかもしれません。

 

しかし、実は、一番力を持っているのは一人ひとりの消費者であるし、まわりまわって恩恵を受けるのもまた一人ひとりの消費者なのです。

 

ただ、難しいのは、短期的には不利益を被る人もいて、恩恵はかなり先になるということです。

 

例えば、多くの人がエコバッグを持ち歩くことで、レジ袋の消費が減ると、スーパーマーケットや商店の経費は減るし、プラスチックゴミも減るけれど、レジ袋を製造・販売している企業の売上は下がります。
エコバッグを忘れたら、買わなければならないのなら、余分な出費も増えます。
食べ残しを減らそうと適量を注文すれば、食品ロスは減りますが、飲食店の売上は減ります。
廃棄を減らすためにコンビニが仕入れを減らせば、買いに行った時に棚に何もない!という状況になるかもしれません。
仕入れを減らされた製造側は、売上が減ります。食材を納品する企業も売上が減ります。
となれば、経営が成り立たなくなる企業や個人も出るだろうし、雇用者の給与も減るでしょう。

 

結局のところ、リオの地球サミットで話された「フェアではない」状況が、あちこちで出てしまうことにもなる。

 

ただ、ふと考えるのです。

 

生地代よりも安い衣料は、コンビニで500円で売っているビニール傘は、100均で打っている様々な商品は、誰が、どこで、どのような労働環境で作ったらこの価格で売ることができるのか。

 

今では当たり前のペットボトル飲料って、私が高校生の頃ってなかったよな。(実は500mlのペットボトル飲料が一般的になったのは1990年代)

 

あ、そうだ、缶飲料だった。部活帰りには、瓶入りジュースを友だちと店先で飲んで、回収箱に入れていたな。そういえば、子どもの頃には、鍋を持ってお豆腐買いに行くお使いをしていたな。

 

コンビニも24時間営業のスーパーもなかったけれど、地元の商店街はにぎわっていたな。

 

電化製品も、修理すればまだ使えるのに、修理するより新しく買った方が安いっておかしくないかしら。しかも修理できる人がもういない?

 

いろいろ便利にはなったけれど、毎週ゴミの分別にあたふたし、ゴミステーションまで運び、粗大ごみに購入した回収シールを貼って出しているのは、全部私が買ってきたものだ。

 

SDG’sの推進が難しい理由の一つに、消費者側の「高品質なものをより安く」が当たり前になり、企業側がその消費者のニーズにこたえるために、より安くかつ良いものを作るためのコストダウンをしなくてはならないという構図があると言われています。

 

つまりは、消費者側が変われば、企業側も変わらざるを得なくなるのです。

 

食べきれない量を買って廃棄するぐらいであれば、その同じ値段で食べきれる量を買う。
かかるべき費用を負担した上で、必要な商品を買う。
余計なものは買わない。
修理できるものは修理する。
成分表示を確認して、自分にとって安全なものであることと同時に、その原料を作っている過程に思いを馳せる。
安い!だけではなく、そこに届くまでにかかっている誰かの「手」に思いを馳せる。

 

消費者一人ひとりがそれを心がけるだけでも、何かが変わっていくのかもしれません。

 

4)理想論だと言ってしまわないで、まずは1歩前に

 

あれこれ考えてしまうと、「できるわけないじゃん」と思う目標であることも確かなのだと思います。
でも、理想を掲げ、そこに向かってとにかく1歩前に進み始めることは、無駄ではないのではないでしょうか。

 

SDGs「17の目標」の中にある、5「ジェンダーフリーを実現しよう」に関わるテーマは、身近な話題として「クオーター制が作る未来 ~制度から意識を変えよう~」 でも触れましたが、絶対に無理だと思っていたことが、実際に35年以上働いてきた私にとっては目に見えて変わってきています。

 

「豊かさ」の指標も、たくさんお金を稼ぎ、消費することだけではないという価値観を様々なかたちで体現し、共感を得る方々も増えてきました。

 

世の中は変わるのです。

 

2030年の世界なんて、考えてみればもう10年もありませんが、私には想像もつきません。

 

だから、まずは「自分がやれることからやってみるか」と、頭の隅にこの目標を置きながら、1歩前に進んでみることにしました。

 

「持続可能な開発」を唱えなければならなくなったのは、今のままでは持続可能ではないということだと意識するのとしないのとでは、未来はまったく違うと信じて。

 


執筆者プロフィール

リサーチコンサルティング部 第2チーム シニアエキスパート  S.T

 

工学部工学研究科博士課程都市・交通計画専攻で道路計画、交通計画、都市計画を学ぶ

公共系シンクタンク、大学研究所では総合計画・各種計画・施策の立案、

住民参加型まちづくり事業の推進を担当

 

高速道路建設の経済効果等を研究する中で、「満足度をお金に換算して経済効果に計上できないのか?」と

思い立ち、マーケティング理論に出会う

39歳でマーケティングリサーチ会社に転職

その後は各種公共施策の立案と並行し、商品開発、市場分析等を担当

海外調査(グローバルリサーチ)については、気づいたら16か国延べ40都市で50以上のリサーチを実施

6年前から現職

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