広告やキャンペーンの成果は、クリック数や売上だけでは十分に判断できないことがあります。ブランドリフト調査は、広告に触れた生活者のブランドに対する認知度、好意度、購入意向などの変化を測る調査です。この記事では、仕組み、手順、設問例、メリット・デメリット、費用の考え方、他の調査手法との違いを初心者にもわかりやすく解説します。
目次
- ブランドリフト調査とは?広告で変わる“気持ち”を測る方法
- ブランドリフト調査の仕組みをやさしく解説
- ブランドリフト調査でわかること・わからないこと
- ブランドリフト調査の主な方法と選び方
- 調査で使われる設問例と指標の考え方
- 実施前に決めたいブランドリフト調査の手順
- ブランドリフト調査の費用は何で変わる?
- ブランドリフト調査のメリット・デメリット
- 会場調査(CLT)・ホームユーステスト(HUT)・インタビュー調査との使い分け
- ブランドリフト調査が向いているケース・向いていないケース
- 調査会社に相談する前に整理したいこと
- よくある質問
- 生活者の変化をつかみ、次の一手につなげよう
- 執筆者プロフィール
- 関連リサーチ手法
ブランドリフト調査とは?広告で変わる“気持ち”を測る方法
ブランドリフト調査とは、広告やキャンペーンによって生活者のブランドに対する認知・印象・購入意向がどの程度変化したかを測る調査です。クリック数やCVなどの行動データだけでは見えにくい「態度変容」を把握するために活用されます。
ブランドリフト調査の意味
ブランドリフト調査は、広告接触によってブランド認知、好意度、購入意向、推奨意向などがどれだけ高まったかを確認する調査です。
多くの場合、広告に触れた人と触れていない人に同じ質問を行い、その差を広告効果として見ます。たとえば、広告に触れた人の購入意向が高ければ、広告が生活者の気持ちを動かした可能性があると判断できます。
商品企画、販促、ブランド戦略では、「広告を出したかどうか」だけでなく、「生活者にどう受け止められたか」を知ることが欠かせません。
クリック数やCVだけでは見えないもの
Web広告では、表示回数、クリック数、CV(コンバージョン)、CPA(顧客獲得単価)などを確認できます。これらは広告の到達や行動結果を把握するうえで有効です。
しかし、広告を見た人がブランドを覚えたか、好感を持ったか、商品特徴を理解したか、将来購入したいと思ったかまでは測りにくいものです。
ブランドリフト調査は、こうした心理的な変化を数値で把握する役割を持ちます。特に、すぐに購入されにくい高関与商材や、新商品、リニューアル商品、認知拡大施策との相性がよい調査です。
ブランドリフトで測れる主な指標
ブランドリフト調査で測れる主な指標には、ブランド認知、広告認知、ブランド好意度、理解度、興味関心、購入意向、利用意向、推奨意向などがあります。
たとえば、新商品の広告では「商品名を知ってもらえたか」、リニューアル商品の広告では「変更点が伝わったか」、ブランド広告では「好意度や信頼感が高まったか」を確認できます。
単に「見られた広告」ではなく、「生活者の意識に変化を起こした広告」だったのかを判断できる点が、ブランドリフト調査の大きな特徴です。
ブランドリフト調査の仕組みをやさしく解説
ブランドリフト調査の基本は、広告に触れた人と触れていない人を比較することです。両者に同じ質問を行い、認知度や購入意向などの差分を見ることで、広告が生活者の意識にどの程度影響したかを判断します。
広告接触者と非接触者を比較する
ブランドリフト調査では、広告接触者と非接触者を分けて調査します。
広告接触者とは、対象の広告に触れた人です。非接触者とは、対象の広告に触れていない人です。両者に同じ質問を行い、回答結果の差を見ることで、広告接触による変化を確認します。
たとえば、広告接触者のブランド認知度が60%、非接触者が45%だった場合、その差である15ポイントが広告による認知向上の目安になります。
リフト値とは何か
リフト値とは、広告に触れた人と触れていない人の回答結果の差分を示す数値です。
たとえば、広告接触者の購入意向が40%、非接触者の購入意向が30%だった場合、リフト値は10ポイントです。この数値を見ることで、広告が購入意向にどの程度影響したかを把握できます。
リフト値は、認知度、好意度、理解度、購入意向など、複数の指標で確認できます。どの指標が伸びたのかを見ることで、広告の強みと課題が見えやすくなります。
調査結果を広告改善に活かす流れ
ブランドリフト調査は、広告の成果を確認するだけでなく、次の施策改善にも活用できます。
たとえば、ブランド認知は上がったものの購入意向が伸びていない場合、商品理解やベネフィット訴求が不足している可能性があります。好意度は高いのに広告認知が低い場合は、媒体選定や配信量に課題があるかもしれません。
調査結果をもとに、広告表現、ターゲット設定、媒体配分、訴求内容を見直せば、次回施策の精度向上につながります。
ブランドリフト調査でわかること・わからないこと
ブランドリフト調査は万能な調査ではありません。得意なのは、広告やブランド施策による生活者の意識変化を測ることです。一方で、売上への直接影響や、購入に至らなかった細かな理由まですべて説明できるわけではありません。
認知度・好意度・購入意向を把握できる
ブランドリフト調査では、ブランドを知っているか、広告を覚えているか、好感を持ったか、商品を使ってみたいと思ったかなどを把握できます。
新商品発売時には、まず認知が広がっているかを確認できます。商品リニューアル時には、変更点や新しい価値が伝わっているかを見られます。ブランド広告では、信頼感、好意度、推奨意向などの変化を確認できます。
このように、生活者の反応を段階的に見ることで、広告や販促がどこまで機能しているかを判断しやすくなります。
売上への直接効果だけを測る調査ではない
ブランドリフト調査は、売上や購入数そのものを直接測る調査ではありません。売上に至る前の認知、興味、理解、好意、購入意向といった中間指標を見る調査です。
そのため、「広告を出したことで何個売れたのか」を知りたい場合は、購買データやPOSデータ、セールスリフト調査などを組み合わせる必要があります。
一方で、購入までの検討期間が長い商材では、すぐに売上だけで効果を判断すると、広告の価値を過小評価してしまうことがあります。ブランドリフト調査は、将来の購買につながる手前の変化を把握するために役立ちます。
サーチリフト・セールスリフトとの違い
ブランドリフトと似た言葉に、サーチリフトやセールスリフトがあります。
サーチリフトは、広告接触後にブランド名や商品名の検索が増えたかを見る指標です。広告によって興味を持った人が、検索という行動を起こしたかを確認できます。
セールスリフトは、広告や販促によって売上や購買がどれだけ増えたかを見る指標です。一方、ブランドリフトは、認知、好意度、購入意向などの意識変化を測ります。目的によって見るべき指標は異なるため、何を明らかにしたいのかを先に整理することが大切です。
| 指標 | 主に見るもの | 向いている目的 |
|---|---|---|
| ブランドリフト | 認知・好意度・購入意向 | 広告による態度変容の把握 |
| サーチリフト | 検索行動の増加 | 興味関心の高まりの把握 |
| セールスリフト | 売上・購買の増加 | 販売効果の把握 |
ブランドリフト調査の主な方法と選び方

ブランドリフト調査には、広告媒体の調査機能を使う方法、インターネットリサーチを使う方法、LINEリサーチを活用する方法、自社で簡易アンケートを行う方法、調査会社に依頼する方法があります。目的や予算、必要な精度に応じて選ぶことが大切です。
広告媒体のブランドリフトサーベイを使う
YouTube、SNS、LINEなどの広告媒体では、広告接触ログを活用してブランドリフト調査を行える場合があります。
媒体のブランドリフトサーベイは、広告接触者と非接触者を分けやすい点がメリットです。広告配信データと連動して調査できるため、媒体内での広告効果を把握しやすくなります。
一方で、設問数、対象条件、分析軸、納品形式などに制限がある場合もあります。媒体ごとの仕様を確認したうえで、自社の調査目的に合うかを判断しましょう。
インターネットリサーチで調査する
インターネットリサーチは、登録モニターにWebアンケートを配信して回答を集める調査です。ブランド認知、広告評価、購入意向、コンセプト評価などを比較的スピーディーに把握できます。
広告効果測定だけでなく、パッケージ評価、広告原稿・動画評価、コンセプト評価などにも活用しやすいため、商品企画やブランド戦略の検討にも向いています。
LINEリサーチでスマホユーザーに聞く
LINEリサーチは、スマートフォンユーザーに回答してもらいやすい調査手法です。LINE内でアンケートに回答できるため、日常的にスマホを使う生活者にアプローチしやすい点が特徴です。
若年層やスマートフォン中心の生活者、LINE広告・LINEプロモーション施策と相性のよい商品では、LINEリサーチの活用も検討しやすいでしょう。
また、広告ID連携調査や生活圏パネル、ジオターゲティング調査など、広告の効果測定に適したサービスも用意されています。ブランドリフト調査の一手法として、あわせて検討してみてはいかがでしょうか。

LINEリサーチ
LINEユーザーから募ったモニターにLINEでアンケートやインタビューの募集ができる国内最大級のスマートフォン専用リサーチプラットフォームです。当社はオフィシャルパートナーの1社で、限定のリサーチメニューの提供が可能です。
自社アンケートで簡易的に確認する
自社の顧客リスト、会員、SNS、ECサイトの購入者アンケートなどを使って、簡易的に広告認知や購入理由を聞く方法もあります。
低コストで始めやすく、すでに接点のある顧客から反応を集められる点がメリットです。たとえば、「どこでこの商品を知りましたか」「広告を見て印象は変わりましたか」といった質問を入れることで、施策の手応えを確認できます。
ただし、自社顧客だけに聞く場合、回答者がブランドに好意的な層に偏りやすくなります。厳密な比較や社内説明に使うデータが必要な場合は、調査会社や外部パネルの活用を検討しましょう。
調査会社に依頼する
調査会社に依頼すると、目的整理、調査票作成、対象者設計、実査、データクリーニング、集計分析、レポート作成まで一貫して相談できます。
特に、調査が初めての場合、どの指標を見るべきか、どの対象者に聞くべきか、どのように分析すればよいかで迷いやすいものです。リサーチャーの支援を受けることで、調査目的に合った設計を行いやすくなります。
社内説明に使える精度の高いデータが必要な場合や、広告施策だけでなく商品開発・リニューアルにも活かしたい場合は、調査会社への相談が有効です。
日本インフォメーションでは、自社・提携あわせて約1,800万人のパネルネットワークを保有しており、出現率の低い対象者にもアプローチしやすい体制を整えています。
さらに、調査設計から調査票作成、実査、集計・分析、報告書作成まで、リサーチャーがワンストップで伴走する体制を整えています。調査に不慣れな方や、複雑な設計が必要な調査でも、安心して相談いただけます。

日本インフォメーションのインターネット・リサーチ
短期間・低コストで幅広い生活者の声を収集できるインターネットリサーチ。豊富なパネルネットワークと調査ノウハウを活かした日本インフォメーションのサービスをご紹介します。
調査で使われる設問例と指標の考え方
ブランドリフト調査では、何を聞くかによって得られる示唆が変わります。認知を見たいのか、好意度を見たいのか、購入意向を見たいのかを明確にしたうえで、調査目的に合う設問を設計することが重要です。
ブランド認知・広告認知を聞く設問
ブランド認知では、「このブランドを知っていますか」「次のうち、知っているブランドをすべて選んでください」といった設問を使います。
広告認知では、「この広告を見たことがありますか」「どの広告を覚えていますか」といった質問を行います。
新商品や新ブランドでは、まず存在を知ってもらえたかを確認することが重要です。認知が十分に広がっていない場合、購入意向以前に、媒体や配信量、クリエイティブの視認性を見直す必要があります。
好意度・理解度を聞く設問
好意度では、「このブランドにどの程度好感を持ちましたか」といった設問を使います。理解度では、「広告を見て商品の特徴を理解できましたか」「このブランドについてどのようなイメージを持っていますか」といった聞き方が考えられます。
広告の印象はよいのに商品理解が低い場合、世界観は伝わっていても、機能やベネフィットが伝わっていない可能性があります。
反対に、理解度は高いが好意度が低い場合は、訴求内容は伝わっているものの、表現やメッセージの受け止められ方に課題があるかもしれません。
購入意向・利用意向・推奨意向を聞く設問
購入意向では、「今後この商品を購入したいと思いますか」と聞きます。利用意向では、「使ってみたいと思いますか」、推奨意向では「家族や知人にすすめたいと思いますか」といった設問を使います。
購入意向や利用意向は、広告が次の行動につながる可能性を見る指標です。推奨意向は、ブランドへの信頼感や満足期待を確認するうえで役立ちます。
商品カテゴリによっては、「購入」よりも「試用」「資料請求」「来店」「問い合わせ」などの行動意向を聞いた方が適している場合もあります。
自由回答で生活者の本音を拾う
選択式の設問だけでは、なぜ好意度が上がったのか、なぜ購入意向につながらなかったのかまでは見えにくい場合があります。
自由回答を組み合わせることで、「価格が高そうに見えた」「自分向けの商品だと感じた」「特徴がわかりにくかった」「パッケージが印象に残った」など、生活者の本音を拾いやすくなります。
ただし、自由回答は分析に手間がかかります。調査目的に応じて、選択式と自由回答をバランスよく組み合わせましょう。
実施前に決めたいブランドリフト調査の手順
ブランドリフト調査は、いきなりアンケートを作るのではなく、目的、仮説、対象者、設問、分析方法を順番に整理することが大切です。手順を押さえることで、調査結果を広告改善や商品戦略に活かしやすくなります。
目的と仮説を決める
最初に、何を明らかにしたいのかを決めます。
たとえば、「新商品の認知が広がったか」「広告メッセージが伝わったか」「リニューアル後のブランドイメージが改善したか」「購入意向が高まったか」など、目的によって設問や分析軸は変わります。
仮説を持つことも重要です。「若年層には認知が広がっているが、購入意向はまだ低いのではないか」などの仮説があれば、調査後の解釈がしやすくなります。
対象者とサンプル数を設計する
次に、誰に聞くかを決めます。性別、年代、居住地、購入経験、カテゴリ利用経験、広告接触の有無など、商品や広告のターゲットに合わせて条件を設計します。
サンプル数は、全体傾向だけを見るのか、性年代別やターゲット別に見るのかによって必要数が変わります。
少数サンプルでは結果のばらつきが大きくなり、正確な判断が難しくなることがあります。分析したい切り口が多い場合は、事前に必要な回収数を検討しておきましょう。
調査票を作成する
調査票では、質問文が誘導的にならないように注意します。
たとえば、「この魅力的な商品を買いたいと思いますか」のような聞き方は、回答に影響を与える可能性があります。中立的な表現で、広告接触者と非接触者に同じ条件で聞ける設問にすることが大切です。
また、認知、理解、好意、意向など、見るべき指標を整理して設問を作成します。設問が多すぎると回答負荷が高くなるため、優先順位をつけましょう。
実査・データクリーニング・集計分析を行う
実査とは、実際に調査を行い、回答を回収する工程です。インターネットリサーチやLINEリサーチを使う場合は、対象条件に合うモニターへアンケートを配信します。
回答回収後は、不自然な回答や条件に合わない回答を確認し、データクリーニングを行います。極端に短時間で回答している、不整合な回答があるなどの場合は、分析対象から除外することがあります。
集計では、全体結果だけでなく、性年代別、広告接触状況別、購入経験別などの違いを見ることで、より具体的な示唆が得られます。
結果をレポート化し、次の施策に活かす
調査結果は、数値を並べるだけでなく、何がわかったのか、次に何を変えるべきかまで整理します。
たとえば、「広告接触者の認知度は高いが、購入意向は非接触者と大きく変わらない」という結果であれば、広告の認知効果はあるものの、購入につながる訴求が不足している可能性があります。
レポートでは、広告表現、媒体配分、ターゲット設定、商品訴求、販促企画など、次の意思決定につながる形で示唆を整理することが重要です。
ブランドリフト調査の費用は何で変わる?
ブランドリフト調査の費用は、調査方法、設問数、サンプル数、対象者条件、分析内容、納品物の範囲によって変わります。単純に金額だけで比較するのではなく、何を明らかにしたいのか、どの精度まで必要なのかを整理して検討しましょう。
調査方法によって費用は変わる
ブランドリフト調査の費用は、広告媒体のブランドリフトサーベイを使うのか、インターネットリサーチを行うのか、調査会社に設計から依頼するのかによって変わります。
広告媒体の調査メニューは、広告接触ログを使いやすい一方で、設問数や分析軸に制限がある場合があります。インターネットリサーチは、設問や対象者条件を柔軟に設計しやすい反面、設計内容によって費用が変動します。
初めて実施する場合は、費用だけでなく、調査設計や分析支援の範囲まで確認しておきましょう。
設問数・サンプル数・分析軸が費用に影響する
設問数が多いほど、回答負荷や画面作成の工数が増えます。また、サンプル数を多く確保する場合や、出現率の低い対象者に絞る場合も費用が上がりやすくなります。
さらに、性年代別、購入経験別、広告接触状況別など、細かい分析軸を設定するほど、必要なサンプル数や集計作業が増える可能性があります。
費用を抑えたい場合は、最初に「必ず知りたい指標」と「あれば見たい指標」を分け、調査目的に直結する設問を優先しましょう。
費用だけでなく活用目的から選ぶ
ブランドリフト調査は、安く実施できればよいというものではありません。社内説明に使うのか、広告改善に使うのか、商品企画やブランド戦略にも活かすのかによって、必要な調査設計は変わります。
たとえば、社内の意思決定に使う場合は、対象者条件やサンプル数、分析方法の妥当性が重要になります。広告クリエイティブ改善が目的であれば、自由回答やセグメント別分析を入れると有効です。
調査費用を判断するときは、価格だけでなく、得られるデータをどの意思決定に使うのかまで考えることが大切です。
ブランドリフト調査のメリット・デメリット

ブランドリフト調査には、広告やブランド施策の価値を可視化できるメリットがあります。一方で、調査設計やサンプル設計が不十分だと、結果を誤って解釈してしまうリスクもあります。良い点と注意点をあわせて理解しておきましょう。
メリット|広告の価値を社内に説明しやすくなる
ブランドリフト調査を行うと、認知度や購入意向の変化を数値で示せます。
ブランディング広告は、短期売上だけでは成果を説明しにくい場合があります。しかし、ブランド認知が上がった、好意度が高まった、購入意向が伸びたといったデータがあれば、広告施策の価値を社内に説明しやすくなります。
次回予算の確保や、広告クリエイティブの改善提案にも活用しやすい点がメリットです。
メリット|生活者の態度変容を把握できる
広告を見た人が、ブランドをどう受け止めたかを確認できる点もメリットです。
たとえば、認知は上がったが好意度は伸びなかった、理解度は高いが購入意向が低い、若年層では反応がよいが中高年層では反応が弱い、といった違いが見えてきます。
こうした結果は、広告表現の見直し、ターゲットの再設定、商品訴求の改善に役立ちます。
デメリット|設計が甘いと判断を誤る
ブランドリフト調査は、設計が甘いと結果を誤って解釈するリスクがあります。
目的が曖昧なまま調査を行うと、得られた数値をどう判断すればよいかわからなくなります。また、質問文が誘導的だったり、比較対象が適切でなかったりすると、広告効果を過大評価または過小評価する可能性があります。
調査を始める前に、目的、仮説、対象者、設問、分析軸を整理しておくことが大切です。
デメリット|サンプル数や外部要因に注意が必要
サンプル数が少ない場合、結果の信頼性が下がることがあります。特に、性年代別や購入経験別など細かく分析したい場合は、各グループで十分な回答数を確保する必要があります。
また、同時期に別の広告、PR、店頭施策、SNS投稿、競合キャンペーンなどが行われていると、どの施策が影響したのか判断しにくくなります。
調査結果を見る際は、広告配信状況だけでなく、周辺施策や市場環境もあわせて確認しましょう。
会場調査(CLT)・ホームユーステスト(HUT)・インタビュー調査との使い分け
ブランドリフト調査は広告やブランド施策の効果測定に向いていますが、商品そのものの評価や使用実態を深く知りたい場合は、会場調査(CLT)、ホームユーステスト(HUT)、インタビュー調査なども選択肢になります。目的に応じて調査手法を使い分けましょう。
CLTは会場で商品や広告を評価する調査
CLTは、対象者に会場へ来てもらい、商品、パッケージ、広告、試作品などを評価してもらう調査です。
提示条件をそろえやすいため、味、香り、見た目、パッケージ、広告表現などを一定の環境で評価したい場合に向いています。
たとえば、食品や飲料の味覚評価、パッケージ比較、広告クリエイティブ評価などでは、CLTが有効な選択肢になります。
HUTは家庭で実際に使ってもらう調査
HUTは、商品を対象者の自宅で一定期間使ってもらい、使用感や満足度を確認する調査です。
日用品、食品、化粧品、家電など、実際の生活シーンで使った反応を知りたい場合に適しています。会場ではわからない、保管しやすさ、家族の反応、継続使用のしやすさなども把握しやすくなります。
商品リニューアルや新商品開発では、ブランドリフト調査とあわせてHUTを行うことで、広告による印象と実際の使用感を分けて確認できます。
インタビュー調査は理由や背景を深掘りする調査
インタビュー調査は、生活者の考え方や行動の背景を深く知るための定性調査です。
ブランドリフト調査では、認知度や購入意向の変化を数値で把握できます。しかし、「なぜ好意度が上がらなかったのか」「どの表現に違和感を持ったのか」「購入したいと思えない理由は何か」といった背景までは、数値だけでは見えにくい場合があります。
そのような場合は、インタビュー調査を組み合わせることで、生活者の言葉から改善のヒントを得られます。
ブランドリフト調査と組み合わせる考え方
広告効果を数値で見たい場合はブランドリフト調査、商品体験を評価したい場合はCLTやHUT、理由を深掘りしたい場合はインタビュー調査が向いています。
たとえば、新商品の発売前にはCLTやHUTで商品評価を行い、発売後にはブランドリフト調査で広告効果を確認する流れが考えられます。
また、ブランドリフト調査で課題が見つかった後に、インタビュー調査で理由を深掘りする方法もあります。複数の手法を組み合わせることで、生活者理解の精度が高まります。
ブランドリフト調査が向いているケース・向いていないケース
ブランドリフト調査は、すべての施策に必要なわけではありません。新商品やリニューアル、認知拡大施策、ブランドイメージの改善などには向いていますが、短期売上だけを判断したい場合や目的が曖昧な場合は、別の調査や指標が適していることもあります。
向いているケース|新商品・リニューアル・認知拡大施策
新商品発売や商品リニューアルでは、生活者が商品を知ったか、特徴を理解したか、試したいと思ったかを確認することが重要です。
ブランドリフト調査を行うことで、広告接触によって認知度や購入意向がどの程度変化したかを把握できます。
特に、市場での認知がまだ低い商品や、既存イメージを変えたいブランドでは、広告による態度変容を見る意義があります。
向いているケース|広告の社内説明が必要なとき
ブランディング広告は、短期売上だけでは成果を説明しにくい場合があります。
そのようなとき、ブランドリフト調査で認知度、好意度、購入意向などの変化を示せれば、広告の価値を社内に説明しやすくなります。
経営層や他部署に対して、「広告によって生活者の意識がどう変わったのか」を示したい場合にも有効です。
向いていないケース|短期売上だけを見たいとき
キャンペーンによって売上がどれだけ増えたかを直接知りたい場合は、ブランドリフト調査だけでは不十分です。
この場合は、購買データ、POSデータ、ECデータ、セールスリフト調査などを組み合わせる必要があります。
ブランドリフト調査は、売上の手前にある認知や意向の変化を見る調査です。短期売上の判断だけを目的にする場合は、目的に合う指標を選びましょう。
向いていないケース|調査目的が曖昧なとき
「とりあえず調査したい」という状態では、設問や分析軸が定まらず、結果を活用しにくくなります。
ブランド認知を見たいのか、広告理解を見たいのか、購入意向を見たいのか、ブランドイメージを見たいのかを事前に整理することが大切です。
目的が曖昧な場合は、いきなり調査を始めるのではなく、まずは課題整理や仮説づくりから始めるとよいでしょう。
調査会社に相談する前に整理したいこと
ブランドリフト調査をスムーズに進めるには、問い合わせ前の準備も重要です。目的や対象者が曖昧なまま相談すると、調査設計や見積もりの前提が定まりにくくなります。事前に最低限の情報を整理しておくと、より具体的な提案を受けやすくなります。
調査目的と活用場面を整理する
まずは、調査結果を何に使うのかを整理しましょう。広告効果の社内報告に使うのか、次回クリエイティブの改善に使うのか、商品リニューアルやブランド戦略に活かすのかによって、調査設計は変わります。
たとえば、社内説明が目的であれば、数値の信頼性や比較軸が重要になります。広告改善が目的であれば、自由回答やセグメント別の分析が役立ちます。
調査の目的を言語化しておくことで、必要な設問や分析方法を選びやすくなります。
対象商品・広告配信状況・知りたい指標をまとめる
相談前には、対象商品やブランド、広告配信の有無、広告媒体、配信時期、ターゲット、知りたい指標を整理しておきましょう。
たとえば、「20〜30代女性向けの新商品広告で、ブランド認知と購入意向がどの程度上がったか知りたい」といった形で整理できると、調査会社も具体的な設計を提案しやすくなります。
広告をまだ配信していない場合も、広告素材評価やコンセプト評価、事前のブランド認知度調査として相談できる場合があります。
納期・予算・必要な納品物を確認する
調査会社に相談する際は、希望納期、予算感、必要な納品物も確認しておきましょう。
ローデータやクロス集計表だけでよいのか、報告書まで必要なのか、社内会議用の示唆出しまで求めるのかによって、費用やスケジュールは変わります。
また、調査後に社内説明や次回施策の検討を行う場合は、単なる集計データだけでなく、分析コメントや改善提案が必要になることもあります。納品物の範囲は、事前に確認しておくと安心です。
よくある質問
ブランドリフト調査を検討する際には、費用、サンプル数、実施条件、BtoBでの有効性、結果が悪かった場合の対応など、細かな疑問が出てきます。実務担当者が迷いやすいポイントをQ&A形式で整理します。
Q.
ブランドリフト調査の費用はどれくらいですか?
A.
費用は、調査方法、設問数、サンプル数、対象者条件、分析内容によって変わります。
広告媒体のブランドリフトサーベイ、自社顧客へのセルフ型アンケート、調査会社への依頼では費用感が異なります。社内説明に使える精度が必要な場合は、調査設計や集計分析まで含めて見積もりを確認しましょう。
Q.
調査に必要なサンプル数はどれくらいですか?
A.
必要なサンプル数は、比較したい対象や分析軸によって変わります。
全体傾向だけを見るのか、性年代別、ターゲット別、購入経験別に見るのかで必要数は異なります。少数サンプルでは結果のばらつきが大きくなるため、分析したい切り口を先に整理することが大切です。
Q.
広告を出していない場合も実施できますか?
A.
広告接触者と非接触者を比較する厳密なブランドリフト調査は、広告配信と組み合わせるのが基本です。
ただし、ブランド認知度調査、広告素材評価、コンセプト調査、パッケージ評価など、近い目的の調査をインターネットリサーチで行うことは可能です。広告前の現状把握として調査する方法もあります。
Q.
BtoB商材でもブランドリフト調査は有効ですか?
A.
BtoB商材でも、認知度、理解度、検討意向、問い合わせ意向などを測る目的で活用できます。
ただし、対象者の条件が細かくなるため、出現率やサンプル確保の難易度を考慮する必要があります。業種、職種、役職、導入関与度などをどう設定するかが重要です。
Q.
調査結果が悪かった場合はどうすればよいですか?
A.
結果が悪い場合も、改善のヒントとして活用できます。
認知が低いのか、理解が不足しているのか、好意度は高いが購入意向につながっていないのかを分解して見ましょう。そのうえで、広告表現、ターゲット、媒体、商品訴求、価格印象などを見直すことが大切です。
生活者の変化をつかみ、次の一手につなげよう
ブランドリフト調査は、広告やブランド施策によって生活者の認知、印象、購入意向がどのように変わったかを把握するための有効な手法です。
新商品開発、商品リニューアル、販促、ブランド戦略では、売上やクリック数だけでなく、生活者の気持ちの変化を知ることが欠かせません。
自社で調査設計に迷う場合は、インターネットリサーチやLINEリサーチ、CLT、HUT、インタビュー調査なども含めて、目的に合う方法を比較してみましょう。
調査会社に相談する前には、対象商品やブランド、広告配信の有無、知りたい指標、希望する調査対象、納期、社内での活用目的を整理しておくと、具体的な提案を受けやすくなります。
目的がまだ明確でない場合も、複数の調査手法を比較しながら、自社に合う進め方を相談してみるとよいでしょう。生活者の変化を正しくつかむことが、次の広告施策やブランド戦略をより確かなものにしてくれます。
執筆者プロフィール

監修:斎藤啓太
日本インフォメーション株式会社 代表取締役社長
日本マーケティング・リサーチ協会 理事
情報経営イノベーション専門職大学【iU】 客員教授
プロフィール
損害保険ジャパンでの法人営業を経て、大手マーケティングリサーチ会社に入社。多くのオフライン調査の実査現場を担当した後、リサーチャーとして主に自動車(耐久消費財)領域の調査企画から分析まで一貫して従事。生活者のリアルなインサイト抽出に強みを持つ。
2010年に当社へ参画後は、食品・飲料・化粧品・トイレタリーなど消費財メーカーのマーケティングリサーチを多数支援。新規顧客の開拓をはじめ、社内における新たなリサーチ手法やデータ分析メソッドの確立を牽引。2019年に代表取締役社長へ就任後も、リサーチ実務の第一線に立ち続け、多数の社内外マーケティングセミナーに登壇。2021年より日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)理事を務めるほか、iU情報経営イノベーション専門職大学の客員教授としてデータサイエンスやマーケティングリサーチの講義を行うなど、実務と学術の両面からマーケティングやリサーチ業界の発展に尽力している。
発信実績
登壇セミナー:顧客理解の深化がブランドを育てる リサーチ×コミュニティから始めるCEP設計、AI・UGC・アンケート・リサーチで探る真相心理、顧客がどう”売上”に貢献するか? 熱狂的ファンと実現する共創マーケティングのはじめ方 、ベテランリサーチャーがおすすめする「読むべき本 2023」、デジタルトランスフォーメーションやコロナで変わるマーケティングリサーチの事例ご紹介 など

執筆:日本インフォメーション 広報
プロフィール
1969年創業、50年以上の実績を持つマーケティングリサーチ会社。食品・化粧品などの日用消費財メーカーから金融機関・学術機関まで幅広い業界のリサーチ課題に対応し、企画設計から分析・報告まで一貫してサポート。特にオフライン調査の年間実施件数は業界トップクラスを誇る。蓄積されたノウハウを活かし、無料調査レポートやセミナーを通じて実務に役立つ情報を発信している。
発信実績
無料調査レポート:レポート執筆90件突破
セミナー:累計参加者数4,000人超