生活者の行動を理解しようとしても、年齢・性別・居住地などの属性データだけでは「なぜその商品を選ぶのか」までは見えにくいものです。シュワルツの価値観理論は、人が大切にする基本的な価値観を10種類に整理し、行動や選択の背景にある動機を読み解くための理論です。マーケティングや商品開発、ブランド戦略に活用すれば、生活者の深層心理に近づく手がかりになります。
目次
シュワルツの価値観理論とは?人の選択を動かす10の基本価値

シュワルツの価値観理論を理解する第一歩は、「価値観」を単なる好みや性格ではなく、人の判断や行動を方向づける根本的な基準として捉えることです。購買行動やブランド選好の背景には、価格や機能だけでなく、「安心したい」「自由でいたい」「認められたい」といった価値観が関わっています。
シュワルツの価値観理論の定義
シュワルツの価値観理論とは、社会心理学者シャローム・H・シュワルツが提唱した、人間の基本的価値を体系化した理論です。人が行動を選ぶときの根源的な動機を10種類の価値観に整理し、それらの関係性を円環構造で示します。
マーケティング実務では、生活者を年齢や性別だけで分類するのではなく、「何を大切にして選んでいるのか」を捉えるための視点として活用できます。
価値観はなぜ生活者行動の理解に役立つのか
価値観とは、生活者が「望ましい」と感じる考え方や行動の基準です。たとえば同じ健康食品でも、ある人は「安全だから」選び、別の人は「自分らしい生活を続けたいから」選ぶかもしれません。
表面的な購入理由は同じでも、背景にある価値観が違えば、響く広告コピーや商品説明も変わります。価値観を理解することで、生活者の選択理由をより立体的に把握できます。
属性データだけでは見えない「選ぶ理由」を補える
年齢、性別、世帯年収、居住地などの属性データは、ターゲットを把握するうえで重要です。しかし、それだけでは「なぜその人がその商品を必要とするのか」までは十分に説明できません。
シュワルツの価値観理論を使うと、同じ30代女性・子育て世帯・都市部居住者でも、重視する価値観の違いによってニーズや訴求軸が変わることを整理できます。
10の価値観を一覧で理解する
シュワルツの価値観理論では、人間に共通する基本的な価値観を次の10種類に分類します。
- 自己決定 (Self-Direction)
- 刺激 (Stimulation)
- 快楽主義 (Hedonism)
- 達成 (Achievement)
- 権力 (Power)
- 安全 (Security)
- 順応 (Conformity)
- 伝統 (Tradition)
- 博愛 (Benevolence)
- 普遍主義 (Universalism)
それぞれの価値観は独立して存在するのではなく、近い価値観と結びついたり、反対側の価値観と緊張関係を持ったりします。まずは、10の価値観それぞれの意味を実務で使いやすい言葉に置き換えて理解しておきましょう。
自己決定|自由に考え、自分で選びたい価値観
自己決定とは、自分で考え、自分で選び、自由に行動することを重視する価値観です。創造性、独立性、好奇心、自分らしさと関係します。
マーケティングでは、「自分に合う」「自由に選べる」「カスタマイズできる」「新しい使い方を発見できる」といった訴求と相性があります。既製品よりも、自分らしく編集できる商品やサービスに反応しやすい層を理解する手がかりになります。
刺激|新しさや挑戦を求める価値観
刺激とは、新しい体験、変化、挑戦、冒険を求める価値観です。日常に変化を加えたい人や、未知の体験に前向きな人に関わります。
新商品、期間限定、先行体験、アップデート、新しいライフスタイル提案などは、刺激を重視する生活者に響きやすい訴求です。一方で、安定や安心を重視する層には不安材料になる場合もあります。
快楽主義|楽しさや心地よさを重視する価値観
快楽主義とは、楽しさ、心地よさ、感覚的な満足を重視する価値観です。気分が上がる、リラックスできる、おいしい、気持ちいい、楽しいといった感覚価値と結びつきます。
食品、飲料、旅行、美容、エンタメ、日用品など、体験価値が重要な商品カテゴリーでは特に活用しやすい価値観です。機能説明だけでなく、使用後の気分や体験を描くことが重要になります。
達成|成功や能力の証明を重視する価値観
達成とは、社会的な基準に照らして成功すること、自分の能力を示すことを重視する価値観です。成果、成長、効率、評価、目標達成と関係します。
ビジネスツール、教育サービス、自己投資商品、キャリア支援サービスなどでは、「成果が出る」「成長できる」「選ばれる自分になる」といった訴求が達成価値と結びつきます。
権力|地位や影響力を重視する価値観
権力とは、社会的地位、影響力、ステータスを重視する価値観です。高級品、プレミアムサービス、役職者向けサービスなどで関係しやすい価値観です。
ただし、日本語の「権力」はやや強い印象を持つため、実務では「ステータス」「信頼感」「影響力」「上質さ」といった言葉に置き換えると扱いやすくなります。
安全|安心・安定・リスク回避を重視する価値観
安全とは、自分自身、家族、社会、人間関係の安定を重視する価値観です。安心、信頼、保証、リスク回避、継続性と関係します。
保険、金融、医療・健康、食品、住宅、セキュリティ、子育て関連サービスでは特に重要です。新しさよりも「信頼できる」「実績がある」「失敗しにくい」といった情報が意思決定を後押しします。
順応|ルールや周囲との調和を重視する価値観
順応とは、社会的なルールや周囲との調和を重視し、他者に迷惑をかけないようにする価値観です。マナー、常識、協調、安心できる選択と関係します。
商品選びでは、「多くの人に選ばれている」「失礼がない」「場にふさわしい」「家族や職場で使いやすい」といった訴求と相性があります。ギフト、冠婚葬祭、ビジネス用品などでも重要です。
伝統|文化・慣習・受け継がれたものを尊重する価値観
伝統とは、文化、宗教、慣習、受け継がれてきた価値を尊重する価値観です。老舗、職人技、地域性、歴史、家族の習慣などと結びつきます。
食品、工芸、観光、地域ブランド、冠婚葬祭、教育などでは、伝統価値をどう現代的に伝えるかが重要です。ただし、若年層向けには「古い」ではなく「意味がある」「受け継ぐ価値がある」と翻訳する視点が必要です。
博愛|身近な人の幸せを大切にする価値観
博愛とは、家族、友人、同僚など、身近な人の幸せや福祉を大切にする価値観です。思いやり、親切、誠実さ、支え合いと関係します。
子育て、介護、食品、ギフト、地域サービス、コミュニティ施策などでは、「大切な人のために」「家族と一緒に」「身近な人を支える」といった訴求が有効です。
普遍主義|公平さ・多様性・自然との共生を重視する価値観
普遍主義とは、すべての人や自然の幸福、公平さ、多様性、環境保護を重視する価値観です。サステナビリティ、エシカル消費、社会貢献、多文化理解と関係します。
環境配慮型商品、フェアトレード、社会課題解決型サービス、D&I施策、地域共創型ブランドなどでは、普遍主義の価値観が重要になります。ただし、表面的な社会貢献訴求ではなく、実態を伴うことが信頼につながります。
円環モデルでわかる、価値観同士の近さと対立
シュワルツの価値観理論の特徴は、10の価値観を単なる一覧ではなく、円環構造として捉える点にあります。円環モデルでは、近くにある価値観は同時に重視されやすく、向かい合う価値観は衝突しやすいと考えます。この構造を理解すると、生活者の迷いやブランドの訴求軸も読み解きやすくなります。
円環モデルとは、価値観の関係性を示す地図
円環モデルとは、10の価値観を円状に配置し、それぞれの近さや対立関係を示す考え方です。たとえば「自己決定」と「刺激」は近く、新しさや自由を求める方向性を共有します。
一方で、「刺激」と「安全」は対立しやすい価値観です。新しさを求めるほどリスクが増え、安心を求めるほど変化を避けやすくなるからです。

出典: Schwartz, S. H. (2012). An Overview of the Schwartz Theory of Basic Values.
隣り合う価値観は共存しやすい
円環モデルでは、隣り合う価値観は心理的に近く、同じ人の中で共存しやすいとされます。たとえば「博愛」と「普遍主義」はどちらも他者や社会への配慮と関係します。
マーケティングでは、隣接する価値観を組み合わせることで、より自然な訴求を設計できます。たとえば「家族にやさしい」と「環境にもやさしい」は、博愛と普遍主義を組み合わせた訴求です。
向かい合う価値観は緊張関係を持ちやすい
円環の反対側にある価値観は、同時に満たしにくい場合があります。たとえば「自己決定」は自由な選択を重視しますが、「順応」は周囲との調和やルールを重視します。
生活者が購入を迷うときには、この価値観の緊張が背景にあることがあります。「自分らしいものを選びたいが、周囲から浮きたくない」といった心理です。
4つの高次価値で全体像をつかむ
10の価値観は、さらに大きく4つの高次価値に整理できます。代表的には、変化への開放性、保守、自己高揚、自己超越です。
変化への開放性は自由や新しさ、保守は安全や伝統、自己高揚は成功や地位、自己超越は他者や社会への配慮に関わります。実務では、10分類を細かく見る前に、4分類で全体像をつかむと理解しやすくなります。
マーケティングでシュワルツの価値観理論が役立つ場面
シュワルツの価値観理論は、生活者の内面を整理するための理論ですが、実務では商品開発、ブランド戦略、広告訴求、セグメンテーション、ペルソナ設計などに応用できます。特に、機能や価格だけでは差別化しにくい市場で、生活者が何に意味を感じているのかを考える手がかりになります。
ターゲット理解を年齢・性別だけで終わらせない
同じ年代や性別でも、重視する価値観は大きく異なります。たとえば同じ30代女性でも、安定を重視する人と、刺激や自己決定を重視する人では、商品選びの基準が変わります。
価値観を加えることで、ターゲット像は「30代女性」から「自分らしい選択を重視する30代女性」「家族の安心を重視する30代女性」へと具体化します。
商品コンセプトの訴求軸を整理できる
商品コンセプトを考えるとき、機能ベネフィットだけでなく、価値観ベネフィットを整理することが重要です。
たとえば同じ時短家電でも、「効率よく成果を出したい」人には達成価値が響き、「家族との時間を増やしたい」人には博愛価値が響きます。価値観を軸にすると、訴求の方向性を明確にしやすくなります。
ブランドの提供価値と生活者の価値観を照らし合わせられる
ブランドが掲げる価値と、実際の顧客が重視する価値観がずれていると、メッセージが届きにくくなります。
たとえばブランド側は「革新性」を訴求していても、顧客は「安心感」や「信頼性」を求めているかもしれません。価値観分析を行うことで、ブランドの提供価値と生活者の期待を照らし合わせることができます。
広告・コピー・クリエイティブの方向性を検討できる
価値観は、広告コピーやビジュアル表現にも影響します。刺激を重視する層には新しさや変化を感じさせる表現、安全を重視する層には信頼感や実績を伝える表現が合いやすくなります。
同じ商品でも、価値観ごとに訴求メッセージを変えることで、広告の反応差を検証しやすくなります。
セグメンテーションやペルソナ設計に活用できる
価値観を軸にしたセグメンテーションは、生活者を単なる属性ではなく、意思決定の基準で分類する方法です。
たとえば「安心重視層」「自己表現重視層」「社会配慮重視層」のように整理すれば、それぞれに合う商品訴求、チャネル、コンテンツを設計しやすくなります。
価値観分析を調査に取り入れる具体的な手順

価値観分析を実務に活かすには、理論を知るだけでなく、調査設計に落とし込む必要があります。重要なのは、価値観を単独で測るのではなく、購買行動、ブランド認知、利用実態、満足度、未購入理由などのデータと組み合わせて読み解くことです。
手順1|調査目的を明確にする
まず、価値観を知る目的を明確にします。商品開発に使いたいのか、ブランド戦略を見直したいのか、広告訴求を改善したいのかによって、調査設計は変わります。
「価値観を知りたい」だけでは分析結果を施策に使いにくくなります。最初に、どの意思決定に活用するのかを決めておくことが大切です。
手順2|知りたい価値観とマーケティング課題を結びつける
次に、10の価値観のうち、どの価値観が自社の課題に関係しそうかを整理します。
たとえば、環境配慮型商品の開発なら普遍主義、ファミリー向けサービスなら博愛や安全、高価格帯ブランドなら達成や権力が関係する可能性があります。仮説を持つことで、調査結果を読み解きやすくなります。
手順3|アンケート調査・インタビュー調査を設計する
価値観を把握する方法には、アンケート調査とインタビュー調査があります。アンケートでは、価値観の傾向を定量的に把握できます。インタビューでは、なぜその価値観を重視するのか、生活背景や体験を深く理解できます。
インターネットリサーチでは、スクリーニング調査で価値観に関する設問を組み込み、本調査で商品コンセプトの需要度や広告訴求への反応を聴取します。価値観タイプ別に回答を確認することで、層ごとの反応の違いを把握しやすくなります。
CLTでは、スクリーニングの段階で参加者の価値観タイプを把握しておくことで、商品コンセプトやパッケージの評価結果を価値観別に分析できます。たとえば、安全を重視する層と自己決定を重視する層でパッケージの印象がどう異なるかを比較することで、訴求軸の絞り込みや優先ターゲットの判断材料になります。
デプスインタビューでは、リクルートの段階で価値観を把握しておくことで、インタビュー中に価値観と購買行動の関係を深掘りしやすくなります。なぜその価値観を重視するようになったのか、どのような体験が背景にあるのかを聞くことで、広告コピーや商品開発に使える具体的な言葉が見えてきます。
参考情報:日本インフォメーションのインタビュー調査
手順4|価値観タイプと行動・意識データを掛け合わせる
価値観データは、単独で見るよりも、購買頻度、利用商品、ブランド認知、満足度、広告接触、未購入理由などと掛け合わせることで実務に活かしやすくなります。
たとえば、同じ未購入者でも、「価格が不安」なのか、「ブランドの価値観に共感できない」のかでは、打つべき施策が変わります。
手順5|商品開発・ブランド戦略・販促施策に落とし込む
最後に、分析結果を施策に落とし込みます。価値観分析は、レポートを作って終わりではなく、コンセプト、コピー、デザイン、チャネル、営業資料、LP、広告配信設計などに反映してはじめて意味を持ちます。
重要なのは、「この価値観の人には、どのような便益を、どの言葉で伝えるか」まで具体化することです。
シュワルツの価値観理論を使うメリット・デメリット
シュワルツの価値観理論は、生活者理解を深めるうえで有効な枠組みですが、万能ではありません。価値観は行動の背景を読むための重要な視点である一方、購買行動は価格、機能、入手しやすさ、タイミング、周囲の影響などにも左右されます。強みと限界を理解したうえで使うことが大切です。
メリット|生活者の深層動機を整理しやすい
最大のメリットは、生活者の行動の奥にある動機を整理しやすいことです。
「安いから買う」「便利だから使う」といった表面的な理由だけでなく、「安心したい」「自分らしくいたい」「家族を大切にしたい」といった深層の価値観を捉えることで、より本質的な生活者理解につながります。
メリット|チーム内でターゲット像を共有しやすい
価値観理論を使うと、抽象的になりがちなターゲット像をチーム内で共有しやすくなります。
「感度が高い人」「こだわりがある人」といった曖昧な表現ではなく、「自己決定を重視する層」「安全を重視する層」のように整理できるため、商品企画、広告、営業、経営層の間で認識を合わせやすくなります。
デメリット|価値観だけで購買行動を断定できない
一方で、価値観だけで購買行動を断定することはできません。人は価値観に沿って行動したいと思っていても、価格、時間、入手性、家族の意見、社会状況などによって選択を変えることがあります。
そのため、価値観分析は購買データや利用実態調査、インタビュー調査と組み合わせて解釈する必要があります。
デメリット|質問設計や解釈には専門性が必要
価値観は抽象度が高いため、質問設計を誤ると、回答者の建前や社会的に望ましい回答に引っ張られる可能性があります。
また、分析結果をそのまま「この人は安全タイプ」と決めつけると、かえって生活者理解を狭めてしまいます。実務で活用するには、理論理解と調査設計の両方が重要です。
どんな企業・テーマに向いている?向いていない?
シュワルツの価値観理論は、あらゆる調査に必ず必要なものではありません。特に力を発揮しやすいのは、生活者の選択理由やブランドとの相性を深く理解したい場面です。一方で、短期的な購入率や単純な満足度だけを知りたい場合には、よりシンプルな調査の方が適していることもあります。
向いているケース|ブランド戦略や商品開発の上流工程
価値観分析は、ブランド戦略や商品開発の上流工程に向いています。まだ具体的な商品仕様や広告案が固まっていない段階で、生活者が何を大切にしているのかを知ることで、方向性を設計しやすくなります。
特に、ブランドの存在意義や提供価値を見直したいときに有効です。
向いているケース|生活者の選択理由を深掘りしたいとき
価格や機能だけでは差別化が難しい市場では、生活者の選択理由を深掘りする必要があります。
たとえば、同じスキンケア商品でも、「安心して使える」ことを重視する人と、「自分を高める」ことを重視する人では、響く訴求が異なります。価値観分析は、この違いを整理するのに役立ちます。
向いていないケース|短期的な購入率だけを知りたいとき
短期的な購入率、価格受容性、広告認知率、キャンペーン効果だけを知りたい場合には、価値観分析を入れなくても十分なことがあります。
価値観分析は、即時の数値確認よりも、中長期的なブランド理解やターゲット理解に向いています。目的に応じて使い分けることが重要です。
他の調査手法と組み合わせると効果的なケース
価値観分析は、インターネットリサーチ、CLT、HUT、インタビュー調査などと組み合わせることで効果を発揮します。
インターネットリサーチでは価値観タイプ別の定量的な傾向を把握し、CLTでは商品コンセプトやパッケージへの反応を価値観別に比較することで、ターゲットに響く訴求軸の手がかりが得られます。HUTでは実際の使用感を価値観別に見ることで、生活文脈との関係を読み解きやすくなります。インタビュー調査と組み合わせれば、数値では見えにくい価値観の背景まで深掘りできます。
調査で活用するときの注意点
価値観分析を実務に取り入れるときは、理論を便利な分類ラベルとして使いすぎないことが大切です。生活者はひとつの価値観だけで動いているわけではなく、複数の価値観の間で迷いながら選択しています。分析結果を正しく読むには、数値と文脈の両方を確認する必要があります。
価値観タイプを単純な性格診断のように扱わない
シュワルツの価値観理論は、生活者を固定的に分類するための性格診断ではありません。
「この人は安全タイプだから新商品には反応しない」と決めつけるのではなく、「安全を重視する人でも、どのような条件があれば新しい商品を試せるのか」と考えることが重要です。
文化・世代・生活環境による違いを考慮する
価値観の表れ方は、文化、世代、家族構成、ライフステージ、経済状況によって変わります。
同じ「安全」を重視する人でも、子育て世帯では家族の安心、シニア層では健康や生活の安定、企業担当者ではリスク回避や実績重視として表れる場合があります。
アンケートだけでなく定性調査で背景を読む
アンケート調査は傾向を把握するのに向いていますが、価値観の背景にある生活文脈を知るには、インタビュー調査が有効です。
スクリーニング調査で価値観を聴取・分析しておき、なぜその価値観を重視するようになったのか、どのような体験が影響しているのかを聞くことで、広告コピーや商品開発に使える具体的な言葉が見えてきます。
分析結果を施策につなげる設計が重要
価値観分析は、結果をどう使うかまで設計しておく必要があります。
たとえば、調査前に「商品コンセプトの見直しに使う」「ブランドメッセージを再設計する」「広告訴求を価値観別に比較する」などの活用先を決めておくと、実務に落とし込みやすくなります。
シュワルツの価値観理論に関するFAQ
シュワルツの価値観理論は、心理学・社会心理学の理論であるため、初めて学ぶと少し難しく感じるかもしれません。特に、10の価値観の違いや、マーケティング実務での使い方については疑問が生まれやすい部分です。よくある質問を通じて、実務で使う前に押さえておきたいポイントを整理します。
Q.
シュワルツの価値観理論とは簡単にいうと何ですか?
A.
人が何を大切にして行動するのかを、10種類の基本的な価値観で整理した理論です。マーケティングでは、生活者の購買理由やブランド選好の背景を理解するために活用できます。
Q.
10の価値観はどれか1つに分類されるものですか?
A.
いいえ。人は複数の価値観を同時に持っています。重要なのは、どの価値観を相対的に強く重視しているかを見ることです。ひとつのタイプに固定するのではなく、価値観の優先順位として捉えます。
Q.
マーケティングではどのように使えますか?
A.
ターゲット理解、商品コンセプト開発、ブランドポジショニング、広告訴求、ペルソナ設計などに活用できます。特に、生活者の「なぜ選ぶのか」を深く理解したいときに役立ちます。
Q.
ペルソナ分析とは何が違いますか?
A.
ペルソナ分析は、代表的な顧客像を具体的な人物像として描く方法です。シュワルツの価値観理論は、その人物が何を大切にして意思決定しているのかを理解するための枠組みです。組み合わせることで、より深いペルソナ設計ができます。
Q.
価値観分析を行うにはどのような調査が必要ですか?
A.
スクリーニング調査で価値観傾向を把握し、インタビュー調査で背景を深掘りする方法が有効です。商品評価やブランド調査、HUT、CLTなどと組み合わせることで、価値観と具体的な行動の関係を分析しやすくなります。
生活者の「選ぶ理由」まで見える調査へ
シュワルツの価値観理論は、生活者を属性や行動だけで見るのではなく、その奥にある「何を大切にしているのか」まで理解するための有効な視点です。商品開発、ブランド戦略、広告訴求において、生活者の価値観を捉えることは、より納得感のあるマーケティング施策につながります。
今後、価値観を軸にした分析手法を活用すれば、従来のアンケートやインタビューでは見えにくかった生活者の深層動機を可視化しやすくなります。自社の商品やブランドが、どの価値観に支えられて選ばれているのかを知りたい方は、関連コラムや資料を参考にしながら、価値観分析を調査設計に取り入れてみてください。
執筆者プロフィール

監修:斎藤啓太
日本インフォメーション株式会社 代表取締役社長
日本マーケティング・リサーチ協会 理事
情報経営イノベーション専門職大学【iU】 客員教授
プロフィール
損害保険ジャパンでの法人営業を経て、大手マーケティングリサーチ会社に入社。多くのオフライン調査の実査現場を担当した後、リサーチャーとして主に自動車(耐久消費財)領域の調査企画から分析まで一貫して従事。生活者のリアルなインサイト抽出に強みを持つ。
2010年に当社へ参画後は、食品・飲料・化粧品・トイレタリーなど消費財メーカーのマーケティングリサーチを多数支援。新規顧客の開拓をはじめ、社内における新たなリサーチ手法やデータ分析メソッドの確立を牽引。2019年に代表取締役社長へ就任後も、リサーチ実務の第一線に立ち続け、多数の社内外マーケティングセミナーに登壇。2021年より日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)理事を務めるほか、iU情報経営イノベーション専門職大学の客員教授としてデータサイエンスやマーケティングリサーチの講義を行うなど、実務と学術の両面からマーケティングやリサーチ業界の発展に尽力している。
発信実績
登壇セミナー:顧客理解の深化がブランドを育てる リサーチ×コミュニティから始めるCEP設計、AI・UGC・アンケート・リサーチで探る真相心理、顧客がどう”売上”に貢献するか? 熱狂的ファンと実現する共創マーケティングのはじめ方 、ベテランリサーチャーがおすすめする「読むべき本 2023」、デジタルトランスフォーメーションやコロナで変わるマーケティングリサーチの事例ご紹介 など

執筆:日本インフォメーション 広報
プロフィール
1969年創業、50年以上の実績を持つマーケティングリサーチ会社。食品・化粧品などの日用消費財メーカーから金融機関・学術機関まで幅広い業界のリサーチ課題に対応し、企画設計から分析・報告まで一貫してサポート。特にオフライン調査の年間実施件数は業界トップクラスを誇る。蓄積されたノウハウを活かし、無料調査レポートやセミナーを通じて実務に役立つ情報を発信している。
発信実績
無料調査レポート:レポート執筆90件突破
セミナー:累計参加者数4,000人超