2021/03/17
執筆者: フィールドワーク管理部 K.M
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
昨年、新型コロナウィルスによる1回目の緊急事態宣言の発出を受け、弊社もオンラインインタビューをリサーチ手法として本格的に取り入れました。
オンラインインタビューはテレビ会議システムを利用し、新型コロナウイルスの感染リスクを気にせずオンラインで定性調査を実施できる手法です。
(オンラインインタビューのメリット・デメリットなどは、「リサーチャーコラム #08 やってみました!オンラインインタビュー」もぜひご一読ください)
弊社では、オンラインインタビューの通信品質を担保するために、対象者にはタブレットとモバイルルーターを貸し出し、ご自宅へ送付していますので、通信機器所有の有無や、デジタルリテラシー(通信機器操作の習熟度)が対象者条件として必要になることはありません。(シニア層の一部を除いては。)
従来の会場まで足を運んでいただく調査では、調査当日に会場内にて調査員によって丁寧にご案内させていただきながら調査を進めることができますが、「調査会場=ご自宅」となるオンラインインタビューではそうはいきません。
オンラインインタビューの場合は実際の調査が始まるまでの間に、事前に接続テストを行い、通信環境の確認および、機器の操作、インタビューの流れについて説明する必要があるのです。
「日本インフォメーション株式会社 ○○でございます。□□に関するオンラインインタビューのための事前接続テストを行わせていただきますので今からお時間15分程度よろしいでしょうか。」
当社では、しっかりと教育された専門のオペレーターにより、日々、事前接続テストを実施しております。
通信機器の操作に抵抗がない世代や、仕事やプライベートでスマホやタブレットを普段から使用されている方々については、ご挨拶からテレビ会議システムへの接続、インタビュー当日の流れのご説明まで、テレワークの浸透やWEB会議などの導入、プライベートでは「オンライン飲み会」の広まりなどもあり、スムーズに完了できることが多くなりました。
しかし、シニア層は少し様子が違います。
このようなことが起きるのです。
“直観的に操作できる“とされるタブレットですが、「電源」「音量+-」と書いてあるようなリモコンに慣れている世代には説明のないボタンはわかりづらいようで、「なんでちゃんとボタンに書いてないの?」とおっしゃる方や、「この機械自体の説明書はないんですか?」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
日本製の製品にあった何ページにもわたる取り扱い説明書に慣れている世代には”まず説明書をよく読んでから使い始める“といったやり方に慣れ親しんでいるため、”まず触ってみる“ということに抵抗があり、「間違えて変なところを触ってしまったらどうしよう」という不安もあるのかもしれません。
また、こんなこともよくあります。
Wi-Fiをご自宅にいれていない方や「Wi-Fi」という文字は見たことがあるけれど、読み方も知らなかったといった方々もまだまだいらっしゃる様です。
接続テストで、「私もう無理、できない」と弱気になってしまったり、「わからん!こんな面倒なのはもういい」と本番のオンラインインタビューへの参加を取りやめようとする方もいらっしゃいます。
それでも、オペレーターは接続への段階をステップ化して呈示し、1つ1つゆっくり丁寧に、時にはジムのトレーナーのようなやる気を引き出す話術も取り入れながら、説明を続けさせていただき、接続テストを行っていきます。
時にはお伝えしていた所要時間15分を過ぎ、30分、45分、60分以上かかってしまった方もいたようです。
それでもなんとか繋がり、カメラにオペレーターの顔が映ると「見えた!」、マイクの音が通じると「聞こえた!」と1トーン高く弾んだ声を発し、それまでの困惑、弱気、お怒りモードの電話越しの声が嬉しそうな顔に変わる方も多く、そんな時にはオペレーターからも「やっとできました!」と嬉しそうに報告が入ります。
日々このようなやり取りを繰り返しながら、我々の接続テストのマニュアル、Q&A集はブラッシュアップを重ね、デジタルリテラシー(通信機器操作の習熟度)が高くはないシニアの方のオンラインインタビューにも柔軟に対応させていただいております。
この状況下、また全国各地を対象とした遠方の対象者を含むインタビューをご検討中の折には、若年層に限らずシニア層を対象とした調査まで幅広く、ぜひ日本インフォメーションまでお声がけください!
ちなみに、私にも70代の父がいます。
父は4、5年前からスマホを所持するようになり、私ともメールやLINE、音声通話でコミュニケーションをとっていました。
簡単には会えないこの状況下で、最近は(私のこどもが勝手にかけているのですが)、ビデオ付き通話をすることが増えてきました。
すると文字や音声のみだった時に比べ、顔色や表情などやはり得られる情報量も多くなり、“繋がっている感”がより強くなったと感じます。
オンラインインタビューを通して、もう少し大きな画面でビデオ付き通話をした方がよりみえるモノが多いことがわかったので、少し遅いですが、父の次の誕生日にはタブレットを送ろうかと考えています。
フィールドワーク管理部 K.M
貸与されているPC3台と、独居老人二人、幼児一人を抱える40代既婚者。
高齢化と少子化という今の日本の縮図のような家庭と職場でいつもバタバタしています。
長く勤めていた前職から現職に巡り合って3年目(調査業界歴は20年を超えました)。
現職では主にHUT、CLT、GI、DIなどの実査の運営を担当。
調査の設定や設問聴取方法、より良い回答環境の整備などについて、フィールドワークという消費者に一番近い立場から、他部署とも日夜議論を重ねています。
日常生活において、特定の商品やサービスにフォーカスしてしまうことも多いのですが、「フラットに見てみるとどうだろう」と自分に考えさせるようにしています。
「消費者の声をクライアントにお届けすることは、一消費者である自分も幸せにする」と信じて。
マーケティングを「一生の仕事」に