2019/12/25
※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。
日本インフォメーションにて、ご好評いただいているサービスの現状について今回はご紹介します。
飲食店やホテルなどの予約が、電話からWEB上で完結するシステムが一般消費者に浸透してきました。私自身もこのサービスを多く利用しており、従来ではお店の営業時間外で電話が繋がらない時間帯に予約ができ大変便利さを感じていました。
・リサーチ参加候補者とのコミュニケーションもWEB上で完結した方が便利なはず
と考え数年前に新開発したのが“FASTCLT”というサービス名のCLT ※1 です。
※1:アンケートモニターを会議室などのリサーチ会場へ集め、アンケートを行うリサーチ手法
会場調査(CLT)ページはこちら
開発のもう一つの背景としては、これまで「参加者のリクルート期間」「納品までの期間」が長いといったクライアント企業様からのご要望を多数頂戴していたこともあります。
これらの問題を解決するために「スクリーニング(対象候補者選定)」「パーミッション取得(参加応諾)」「参加日時調整」を電話聴取ではなく、リクルートに関わる対象候補者とのコミュニケーションはWEB上で実施し、タブレット端末でアンケート回答してもらうことで、高いクオリティでの短納期化を実現しました。
・「CLTのデジタルトランスフォーメーション」
といえる大きな取り組みでした。
一方で「電話でコミュニケーションしないことによる対象者のクオリティ」「紙からタブレット端末回答への変化による回答の質」といった点にご質問を多くいただくため、今回は長年フィールドワーク部門に在籍してきた私の現場感を踏まえ詳細をご紹介します。
電話で行う一連のリクルート工程は、多忙な対象候補者が望むタイミングで連絡できるとは限らず、不通が続くなどコミュニケーションに一定の時間がかかります。一方、当社のWEB自動リクルートシステムは、全てのリクルート工程をWEB上で行うため、対象候補者にとって適切なタイミングでコミュニケーション(操作)することができます。そのため電話に比べ最大で1週間程度の大幅な時間短縮が実現されています。
対象外の方が混じらないように、
・「リクルート段階におけるWEB回答で、真摯に回答していない方を選定外とする」
・参加確定後、重要な質問は「システム上で再質問し条件不一致がないか確認する」
といったことを徹底し「対象者のクオリティ維持」に努めています。
また、システム使用時の「当日の欠席率」も性別・年代別にデータベース化しているため、調査設計を欠けることがありません。
タブレット端末回答の最大のメリットは、納品までの圧倒的なスピードです。紙のアンケート票回答では、集計・分析のためデータ入力作業が必須ですが、タブレット端末回答は直接データとして落とせるため大幅な時間短縮が実現されます。
また回答用のシステム上でロジック制御をかけられるため、紙では調査員のチェックが不可欠であった記入漏れや回答矛盾などが、タブレット端末回答に変えることで即座に確認・訂正をすることができます。対象者が回答を終了した時点で簡易集計結果をリアルタイムで確認可能なこともメリットの1つです。
数年前にタブレットでの回答方法を当社で導入を検討した際には、
・年配の方には紙の調査票と同様に回答するのは難しいのではないか?・・・
・自由回答の量や質が変わってしまうのではないか?・・・
という否定的な意見が社内でも出されたのは事実です。
ただ、ここ数年でスマートフォン・タブレットの普及率は急速に拡大し、世帯保有率はスマートフォンで約8割、タブレット端末も4割を超えるようになりました。
(総務省 平成30年通信利用動向調査 より)
上記データからも、50代~60代の方もスマホを持っている方が多くを占めるようになったことがわかります。そのためタブレット端末での回答を不自由なく操作いただけるようになりました。
また、自由回答の記入量(文字数)も自主調査で検証を行っております。
・紙ベースの調査票とタブレットで行った回答結果に、回答の文字数に大きな変化がない
・自由回答の質についても、同じ傾向である
といったことも検証済みです。
※購入意向理由の文字数がやや減少しましたが、漢字変換が容易にできるゆえであり意味合いに変化はみられませんでした
普及率が高まってもすべての対象者がタブレット端末を使いこなせるわけではありません。年配の方や機械が苦手という方もいるのも実情です。
当社では会場アンケート(CLT)において対象者の回答サポートを行う“調査員”を専属ネットワーク化しています。「対象者の誘導」「回答サポート」「アンケート品の説明」「回答チェック」「自由回答の深掘り」等の技術を研修によりトレーニングを受けている専門家です。専門性を持つ調査員とデジタル技術の革新であるタブレットを融合させるからこそ、苦手な方もうまく誘導し回答の質が紙と変わらない質を維持できていると考えております。
デジタルやIT技術は、生活者の“声”を明らかにするより便利な手段に過ぎなく、リサーチの本質への理解がなければ宝の持ち腐れです。一貫してリサーチの専門性を磨いてきた当社の基本スタンスがあって、CLTのタブレット化がはじめて有効な提案になるはずです。
実査方法が変わっても、生活者の“声”をより深く正確に引き出し、生活者の“インサイト”をお客様へ届けるために、私たち現場の人間は一人一人に寄り添うことをモットーに、日々思考しながら奔走しています。
フィールドワークグループ(フィールドワーク担当) Y.M
調査歴:19年
年間担当本数:50本以上
過去担当本数:1,000本以上
対応手法:CLT、定性調査、訪問観察調査、店頭調査、ミステリーショッパーなど幅広い手法を経験
生まれは下町・人形町。自営業の次男として下町の愛情を肌で感じながら育つ。大学時代はマーケティングを専攻するも大学卒業時は就職氷河期真っ只中。当時人形町にあったリサーチ会社のフィールドワーク部門に就職し、社会の荒波にはじめて揉まれる。入社8年後、あんなに激しかった荒波もいつかしか乗り越えられようになってきて、新たな大波を求め現職に至る。現職ではその波の大きさに悪戦苦闘しながらも、“生活者”と“クライアント”の架け橋となるべく、“正確なデータ”をいかに“スピード感”をもって提供できるか模索中。
マーケティングを「一生の仕事」に