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2023/12/25

NIリサーチャーコラム #37 日本の市場を知ろう~統計データから見る日本市場~

執筆者: リサーチ・コンサルティング部 シニアリサーチャー S.T

※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。

 

1)少子高齢化社会と言うけれど

 

「少子高齢化社会」をなんとかするために、少子化対策をしなければ!

 

何年(何十年?)も前から聞いているフレーズですが、実際に今の日本の人口構成がどうなっているかご存じですか?

 

下図は2021年10月1日現在の日本の人口ピラミッドです。

 

戦争が続けば出生数は減り、戦争が終われば爆発的に増えました。「団塊の世代」です。

 

そして、親になる世代が多ければ子どもも増えるので、当時は30歳ぐらいまでに2~3人の子どもを産んでいたことから、50歳前後にいわゆる「団塊ジュニア世代」がいます。

 

54歳が少ないのは、「丙午(ひのえうま)」という迷信で産み控えが起きたからです。

 

人間に限らず生物はみな「5歳が足りないから」「20歳が足りないから」といってその年齢の人を作ることはできないし、人間の寿命は長いので、このようにその国の歴史が人口構成に現れるのです。

※データ出典:総務省人口推計(2021年10月1日)

 

私の両親は昭和一桁世代ですが、大人になっても生きていた人たちだけで、父のきょうだいは5人、母のきょうだいは9人いました。

 

だから私には双方合わせていとこが30人以上います。

 

父が亡くなった時に相続の関係で戸籍を取り寄せたら、どうも父には実際は10人ぐらいきょうだいがいたようでした。

 

存命の母もほんとうは13人きょうだいだったと言っています。

 

別に訳ありの家族だったわけでもなく、父は少々特殊ではありましたが、母のきょうだいの両親は同一です。

 

つまり一組の夫婦が13人の子どもを産んでいたのです。

 

母方の叔父叔母といとこは、もうどこが境目だかわからないぐらい、いとこより年下の叔母(生まれた時からおばさんだった)もいました。

 

地方都市に通勤可能な程度の田舎ですが、昭和20年代頃まではそれが当たり前でした。

 

戦後、核家族化が進み、夫婦に子ども2人が標準家庭となり、さらに一人っ子が珍しくなくなり、女性の社会進出が進み、初婚年齢が上がり、合計特殊出生率(15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの)が1989年に1.57になって大騒ぎしていたのがもう35年近く前。

 

コロナ禍の前2019年には1.36まで下がりました。

 

その結果がこのピラミッドです。

 

 

こちらは2023年の人口データから作成したA国とB国の人口ピラミッドです。

 

さてどこの国でしょうか。答えは末尾に記載してあります。

 

 

国によってずいぶん形が違うことがわかります。

 

日本のこの状態がどれだけ特殊かを知るためには、「人口ピラミッド 世界」で検索してみると、世界各国の人口ピラミッドが確認できるサイトがいくつか出てきますので、ぜひ確認してみてください。

 

 

2)重要なのは人口だけではない

※出典:令和3年国民生活基礎調査

 

こちらは1985年~2020年までの世帯年収の推移を世帯主年代別にみたものです。

 

1990年代~2000年初頭にかけては、50~59歳、40~49歳が他を大きく上回っています。

 

今から20年~30年前ですから、ちょうど「団塊の世代」がこの年齢層で、つまり「人数も多かったし、所得も多かった」ということです。

 

その後、バブル崩壊とともに各年代とも横ばいで、さらに「団塊ジュニア」を挟んだそれぞれの年代の人口は減っています。

 

このようなグラフや数値を見る時は、単に「世帯年収」としてだけはなく、「世帯年収×世帯主の人口ボリューム」を考えていくと、見えてくるものが変わってきます。

※出典:令和3年国民生活基礎調査

 

世帯収入が減ったのは、世帯人員が減った(単身や夫婦のみ、子どもの数が減った)からではないのかと思い、こちらの数値も拾ってみました。

 

これは「世帯一人当たり平均年収の推移」です。「50-59歳」はこの30年突出はしていますが、内容は変わっています。

 

1枚前の「世帯年収」のグラフと見比べていけば、30年前は、50代世帯主の子どもたちは20代前後で、その頃は世帯全員がおそらくは豊かに暮らせていたのです。

 

しかし、現在の50代の世帯一人当たりの平均年収の高さは、果たしてその時と同じなのか。

 

さらに、自身で働くことができない15歳未満の子どもを育てている世帯も多いであろう20代、30代の世帯収入の横ばい、減少は、子どもたちの教育や生活にも関わっているはずです。

 

 

3)使えるお金って?

※出典:家計調査(令和5年 4~6月期)

 

こちらは、令和5年の家計調査から「貯蓄」と「負債」をまとめたグラフです。

 

世帯主の年代が上がるごとに貯蓄も増えていきます。

 

負債は住宅ローンなどを抱える年代と重なるので、30代後半から40代に増えています。

 

「負債」が減り「貯蓄」が増えていけば、「貯蓄現残高-負債現残高」も+に大きく上昇していきます。

 

私たちが、「モノを買ってもらえるか」「このサービスは売れるのか」といった市場を見る時、年収だけでは測れないことが多いため「可処分所得」=使えるお金の大きさを基準にすることが多いのですが、負債額がまだまだ多く、教育費などの固定費がかかる40代、50代の収入が頭打ちであることから、財布の紐を緩めない理由もわかるのではないでしょうか。

 

 

そしてさらに深刻なのは、これが10年後、20年後にこのままで推移していくのか?という不安です。

 

現在の収入が増えなければ、貯蓄もできません。

 

住宅など大きな負債(不動産は資産としては残りますが)を背負わなければ、「貯蓄現残高-負債現残高」はそれほど減らないのかもしれませんが、資産は減ります。

 

またこれはあくまでも平均値で、二極化が進んでいる現在、平均値だけで見ていては見逃すこともあります。

 

 

4)市場は多角的に見よう

 

様々なデータを並べてきましたが、単純に推計をすると、今のままでは日本の未来は決して明るいとは言えません。

 

人口は減り、収入も頭打ちとなれば、貯蓄も困難になっていきます。つまり人口×可処分所得は急速に減っていくわけです。

 

今、モノを売る、サービスを売るという視点で考えても、若年層市場は今のままでは何年経っても急速に拡大することはないですし、高齢者市場も団塊ジュニア世代までは縮小していきます。

 

そして団塊ジュニア世代が高齢者になった時、果たして今の高齢者と同じだけの資産を持っているのかどうかも、現状ではかなり可能性が低いと言わざるを得ません。

 

 

さて、ここでクイズの答えです。

 

A国=アメリカ、B国=中国です。

 

人口の総ボリュームが違うので一概に言えない部分もありますが、現在、非常に大きなターゲットと考えられている中国市場も、「一人っ子政策」(※1979年から2014年まで中華人民共和国で実施された、原則として一組の夫婦につき子どもは一人までとする政策)の影響で、今後どこまで10億人規模の人口を維持できるのかも不透明です。

 

「一人っ子政策」も当時の人口抑制のために考えられた施策でしたが、生まれる子の数が減れば、何十年先の出生数は様々な社会情勢の影響も受けつつさらに減ります。市場としてだけではなく、これまで人件費の安い生産現場と考えられていた状況も急速に変化しています。

 

アメリカは、世代間の人口はうまく同程度が保たれていますが、これも人口×収入=市場ととらえた中身は別の視点で見る必要があります。

 

自国の人口が少なければ、移民や外国人労働者を受け入れれば良いという考え方も、確かに世界の人口は増えていますが、今後は国際的な労働力の奪い合いになっていくことは現在でも既に兆候は見え始めています。

 

また移民や外国人労働者は、自国に家族などがいれば自国への送金も収入の中の大きな割合を占めることが多いので、国という単位でみると居住国に落ちるお金(居住国での市場)に大きな影響を及ぼすこともたやすく想像できます。

 

 

「○○市場は有望そうだ」「この世代になら売れそうだ」

 

様々な情報はあふれていますが、一度このような統計数値にも目を向けて、「10年先はどうなのか」「20先はどうなのか」を考える機会を持つことをお勧めします。

 

収入はさまざまな施策で増やすことはできるかもしれませんが、人口は急激には増やせません。

 

さらに、生産年齢人口(自分で稼いで自分で使える人口)は、今、出生数を増やし始められたとしても、そこから20年経たないと増えていきません。

 

となると、わずかな収入上昇×少ない人口だと、市場に入るお金の絶対数はさらに減ってしまうわけです。

 

 

この市場の中で、どのような商品を送り出していくべきなのか。

 

その調査のお手伝いをしながら、またこのような数値を冷静に分析していく目を同時に持っていたいと日々考えています。

 

一見暗い話になってしまいましたが、危機がわかれば対応もできます。

 

今この時は無理でも、ターニングポイントが早ければ、回復のポイントも早くやってくるとも言えます。

 

来年がそのターニングポイントになることを祈りながら、2023年最後のコラムを閉じたいと思います。


執筆者プロフィール

リサーチ・コンサルティング部 シニアリサーチャー S.T

 

工学部工学研究科博士課程都市・交通計画専攻で道路計画、交通計画、都市計画を学ぶ

公共系シンクタンク、大学研究所では総合計画・各種計画・施策の立案、

住民参加型まちづくり事業の推進を担当

高速道路建設の経済効果等を研究する中で、「満足度をお金に換算して経済効果に計上できないのか?」と

思い立ち、マーケティング理論に出会う

39歳でマーケティングリサーチ会社に転職

その後は各種公共施策の立案と並行し、商品開発、市場分析等を担当

海外調査(グローバルリサーチ)については、気づいたら16か国延べ40都市で50以上のリサーチを実施

定量調査のみではなく、定性調査のモデレーター、ワークショップのファシリテーターなど、定性調査の実施・分析も担当

8年前から現職

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